研究課題/領域番号 |
26420878
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
石井 保行 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部, 研究主幹 (00343905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電磁石型PIGイオン源 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が開発しているMeV領域の小型イオンマイクロビーム装置への搭載を目指したイオン源を開発している。このイオン源は高電圧部に設置し、しかもレンズ系に適したイオンビームを発生するため、省電力ながら高輝度、且つ低エネルギーのビームの発生を必要とする。これに適したイオン源として最終年度で永久磁石型PIGイオン源の開発を目指している。今年度はこのイオン源の開発のための基礎データを得るため、前年度に製作した電磁石型PIGイオン源を用いて以下に示す水素イオンビームの発生実験を行い、基礎データを蓄積した。 電磁石型PIGイオン源は小さなプラズマ発生部に強い磁場を発生させて、高密度プラズマの生成を目指している。そこで、はじめに電磁石の磁場を測定し、ほぼ設計に近い磁場強度を発生できることが分かった。次に、プラズマの発生及びイオンビームの引き出し実験を行い、プラズマは磁場強度0.2T、放電電圧500V及び真空度1×10-3torr程度で点灯することが分かった。しかし、ビーム電流は1μA程度と少なかったため、放電電圧、磁場強度及び真空度をそれぞれ変数とし、これらの相関を取った。更に、プラズマ発生部を小さくして、磁場強度を上げてイオンと電子の衝突を増やす改良を行った結果、ビーム電流はほぼ目標の10μA程度を発生した。この後、発生したビーム電流のイオン種の分析を行った結果、プロトンビームの発生割合が他の水素分子イオン(H2+とH3+)ビームの10%程度であることが分かった。このプロトン比の改善及びもう一つのイオン源の特性であるビーム輝度の測定は次年度の課題とした。また、本イオン源の消費電力は、20W以下で、このうち電磁石が主な電力消費源で、15W程度であった。これを勘案すると次年度に開発する永久磁石型PIGイオン源では、消費電力は数ワットとなり、これは目標を満たす値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度では電磁石型PIGイオン源により多くのビーム発生実験を行い、最終年度に開発する永久磁石型PIGイオン源を設計するための多くの基礎データを取得できた。一方、イオン源で発生するビーム電流を増やすことに時間を割いたため、プロトン比の改善、ビーム輝度の測定及び永久磁石型PIGイオン源の設計・製作には至らず、次年度で実施することとなった。しかし、これらは次年度早々に実施できる予定であり、十分遅れを挽回できると考え得られるため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、H27年度に課題となったプロトン比の改善やビーム輝度の測定実験を行った後、永久磁石型イオン源を設計・製作し、このイオン源でのイオンビーム発生実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に永久磁石型PIGイオン源を製作する予定であったが、これをH28年度に製作することとしたため、このイオン源の製作費を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度に永久磁石型PIGイオン源を製作し、H28年度に繰り越した金額を使用する。このためH28年度に交付額の全額を支出する予定である。
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