ビ-ムエネルギーが数100keVから数MeVのイオンマイクロビーム(以下、マイクロビ-ム)は、現在、30m程度の大型の装置群により形成されているが、このビ-ムの利用拡大を目指して、量研機構高崎研では、デュオプラズマトロン型イオン源と加速レンズを持つ小型イオンマイクロビーム装置(以下、小型マイクロビーム装置)を開発している。現在この開発での課題の一つは、イオン源がフィラメントを使用しているため、大電力と頻繁な交換を必要とすることである。本研究では、フィラメントが無い冷陰極型のPIGイオン源を基に、小型マイクロビ-ム装置への搭載に適した小電力ながら、高輝度及び低エネルギーなイオンビームを発生し、ほぼメンテナンスフリーなイオン源を開発することである。 本研究は三年計画で、過去2年(H26、H27)で、冷陰極型PIGイオン源で低エネルギー・高輝度なイオンビームの発生条件を調べるため、磁場強度を可変な電磁石型のPIGイオン源を開発し、H27年度ではビ-ム電流や輝度を測定した。最終年度(H28)では、最終目的の更に小電力で動作できる永久磁石型のPIGイオン源を開発するため、H27年度で得られた結果を基に、安定で高輝度なイオンビームが発生できる磁場強度やプラズマ発生室の大きさを決めた。これを基に磁気回路を設計し、永久磁石型のPIGイオン源を設計及び製作した。更に、水素イオンビ-ム発生実験を行い、初期実験ながらイオン源が1W以下で運転でき、目標値には達していないものの1.1keV程度の低エネルギーで輝度が約4×10E3A/(cm2・sr)、ビームエネルギー幅20eV以下の水素イオンビームを発生でき、今後放電ガス圧の調整による低電圧放電化や引き出し電極系の改良でほぼ目標を達成できる見通しを得た。この結果から小型マイクロビーム装置の実用化のための課題の一つに対してほぼ解決できる目処が得られた。
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