資源枯渇や地球温暖化、自然災害対策として、再生可能型や分散型の電源、また小規模地域独立型系統の研究が進められている。一方、従来の商用大規模電力系統は、定態安定度限界を超えないよう、また事故等による過渡安定度確保のため相差角20~30度以内で運転されるが、需要増加による運用点相差角の増大により不安定性の増大が強く懸念されている。今後、災害対策や経済性を考慮すると、再生可能型、分散型はもとより、地域独立型系統といえども商用電力系統との連系が指向され、大規模複雑な系統の安定化が重要となると考えられる。そこで、色素増感太陽電池、エネルギー貯蔵装置、独立系統を三機無限大母線系統に連系した系統模擬実験システムを構築し、以下の複雑系制御法を用いて安定化を図ることを目的とした研究を進めた。 OGY 法においては離散時間の変更、アルゴリズムの改良を繰り返して制御特性の改善を行った。遅延フィードバック法においては、遅延時間や増幅度に対する依存性を測定し、小容量電力系統における最適な制御パラメータを探索した。色素増感太陽電池は、波長感度特性から散乱光も有効に利用できる利点があるため、クローズドグリッドにおける分散型電源に適しているので、そのモジュールからの不規則な電力印加とクローズドグリッドの相差角の不安定挙動との相関を調べた。また、仮想同期発電機制御法を改良したMKD制御法を用いて、クローズドグリッドにおける擾乱除去特性の改善を行った。本研究において開発してきた上記の複雑系制御法は、クローズドグリッドのような小容量で安定性に問題のある系統を含めて有効であることを示すことが出来た。
|