研究課題/領域番号 |
26420884
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
蜂谷 寛 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (90314252)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー生成 / エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
酸化亜鉛ZnOに加えて、同じウルツ鉱型結晶構造をとり同じくワイドバンドギャップ半導体であるGaNを用い、極低温または室温においてラマン散乱およびフォトルミネッセンス(PL)測定を行った。さらに、冷却したサンプルに、Zn0, GaN のラマン・赤外活性である光学フォノンモードに対応する波長に調整した中赤外パルスレーザー(KU-FEL)、およびラマン散乱測定用のプローブ光(Nd-YAG レーザー第 2 高調波: 532 nm) を同時照射した。 ZnO に対して FEL とプローブ光を同時照射したところ、二光子励起によるフォトルミネッセンスのピークに隠され、選択的格子振動励起を示すアンチ-ストークス・ラマン散乱の信号を高い S/N 比で観測 するには至らなかった。この信号観測を阻害する幅広い発光の起源は、酸素空孔によるものであると考えられる。いったん真空・低温下で測定した後の試料を He-Cd レーザー 325 nm で励起したところ、 バンドギャップ発光によるとされる鋭いバンド(400 nm 付近)は消失し、幅広い発光のみが残った。 同じく GaN に対して同時照射を行ったところ、A1(LO) モードの励起を示すアンチ-ストークス・ラマン散乱の信号を観測することができた。ポンプ光+プローブ光のうち、A1(LO) モード(731 cm-1) の振動エネルギーに対応する波長に調節した FEL 光の on/off に呼応して同モードのラマン・シフト位置の信号が on/off されるために、この信号が選択的格子振動励起に対応すると考えられる。 ひきつづき、ZnOおよびほかの金属酸化物半導体に対して、GaNにおいて成功した分光実験の手法の展開を行い、光利用半導体のエネルギー変換過程における格子振動の特性を明らかにすることを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究を順調に進め、自由電子レーザー実験設備(KU-FEL, 京都大学エネルギー理工学研究所)を用いたなエネルギー高効率利用ワイドギャップ半導体の解析手法の確立のために、具体的な化合物に対する同手法の応用に成功することができた。 ファイバ付小型分光器による(ストークス)ラマン散乱スペクトルの測定も順調に行うことができ、ZnOをはじめとしてGaN等の無機半導体のみならず、有機無機ハイブリッド・ペロブスカイト型太陽電池材料などのエネルギー機能解析のための分光に対する応用も進行中である。 とくに試料環境によるエネルギー変換特性の劣化と欠陥生成との関わりの解析において、後者のコンパクトかつ迅速なスペクトル取得によって、経時的な変化の解析を簡便に行うことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
測定システムに関しては前年度までの手法を継続し、とくに金属酸化物(ZnO, TiO2, SrTiO3など)への同手法の応用の確立を中心として、適宜シミュレーションにおける電子構造計算を用いつつ、金属酸化物半導体におけるエネルギー変換・利用における欠陥生成と、そのエネルギー変換メカニズムの中心であるバンドギャップ内および近傍における電子格子相互作用を中心とした電子構造と光励起過程との関わりを明らかにすることを目指す。 新たな展開を行っているうちの一つである、太陽電池多層膜中のペロブスカイト型の材料においては、試料環境に強く依存した、時間に伴う欠陥生成とそれを原因とするエネルギー機能の低下が顕著であることが見いだされており、とくにこの問題に着目して今後の研究を推進していくことは非常に有益であると考えている。
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