研究課題
平成28年度は、立方晶ペロブスカイト型構造の SrTiO3 (STO)を試料として用い、太陽電池材料として非常に高いエネルギー機能を持つ半導体における、フォノンの媒介により発現される物性の解明への展開を目指した。立方晶の STO においては、対称性の高さに起因する観測に適したフォノン・モードの少なさが、選択的格子振動励起の観測を阻害している。STO におけるカチオン置換による欠陥生成を通じた電子ドープや、多結晶試料による選択律の緩和が知られる。本研究ではまず Nb ドープ STO に対する FEL 照射による選択的格子振動励起と、そのラマン散乱を用いた観測法の確立を試みた。また、STO の吸収端においては、特定のフォノン吸収とフォノン放出の PL が生じることが知られているため、この発光を用いた格子振動励起の検証にも着手し、今後も継続して研究を遂行する予定である。研究期間を通じては、単結晶 ZnO をはじめとする、次世代の太陽電池材料においてその変換効率を左右する金属酸化物を主な研究対象として、とくに効率を決定づける光学フォノンモードの中赤外パルスレーザーによる選択励起とフォノン励起による効果を明らかにする分光法の確立に注力した。ZnO の欠陥由来の PL 分光を踏まえ、同じ結晶構造の GaN における A1(LO) モードの選択的格子振動励起を行った。ZnO において不純物や欠陥に由来する発光が二光子励起による ZnO からの PL 信号がラマン散乱信号観測における S/N 比を低下させる一方、そのような構造の生じない GaN では十分な S/N 比でフォノン選択励起の信号を観測することができた。本成果については、論文 Jpn. J. Appl. Phys., 56, 022701 (2017) として発表し、JJAP "Spotlights"論文に採択された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Japanese Journal of Applied Physics
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