研究課題/領域番号 |
26420886
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
林 秀千人 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10173022)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 浸透圧発電 / モジュール流動 / 偏流 / 濃度分極 |
研究実績の概要 |
平成26年の研究内容は、次の2点であった。①中空糸群における浸透・流動特性を解明する基礎実験の装置製作、②モジュールへのモデル拡張検証試験への装置の改良。 このうち、①については、具体的に中空糸の浸透性能の評価。中空糸を束にした中空糸群における密集度と浸透性能、流動抵抗の関係の評価。中空糸同士の干渉が濃度分極の形成へ及ぼす影響を調べる装置開発である。さらに、流動抵抗と流れの方向性が浸透性能に及ぼす影響を明らかにする予定であった。これについて、中空糸群における浸透・流動特性を解明する基礎実験の装置製作においては、中空糸群の流動抵抗を計測する装置を製作し、この装置により基礎解析を行った。モジュール内の径向きの流動抵抗を、中空糸密度を変化させて明らかにできる装置を製作した。さらに、中空糸を束にした中空糸群における密集度と流動抵抗の関係の評価を行い、中空糸同士の干渉を明らかにした。また、実際のモジュールでの流動抵抗と流れの方向性が浸透性能に及ぼす影響をシミュレーションによって明らかにした。 ②については、.計測点数、計測項目の増加。モジュール耐圧の向上。等の改良を行う予定であった。モジュールへのモデル拡張検証試験への装置の改良においては、淡水および塩水の流量及び圧力範囲を広げ、海水での浸透研究ができる条件を満たすように改良した。さらにモジュール前後の圧力、濃度、およびモジュール流量を計測することで、モジュール内の流れを推定していたが、本改良によりセッゼルにおける濃度分布を直接計測できるようになった。流れの方向特性の把握のために、PIV技術を利用し速度ベクトルを計測するプログラムを製作中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅰ. 中空糸群における浸透・流動特性を解明する基礎実験の装置製作においては、中空糸の浸透性能の評価のための装置作成ができた。さらにそれを用いた中空糸群における密集度と流動抵抗の関係を評価することができた。ただ、濃度分極の形成への影響についてはまだ、問題があり、次年度への課題である。モジュール内の流動抵抗と流れの方向性が浸透性能に及ぼす影響に関しては、シミュレーションにより、3次元的な流動抵抗を精度良く表現できるようになった。 Ⅱ. モジュールへのモデル拡張検証試験への装置の改良 1.モジュール内の詳細な流れ分布を把握するための、流動特性の計測点を増加させた。さらに、速度ベクトルをPIV法を適用して解析する方法を開発中である。 以上のことから、平成26年度の計画のうち、基礎実験についてはほぼ達成でき一部平成27年度の内容も進めている。、モジュール実験についても、ある程度達成された。ただ、PIVによる解析法がまだできていないため、次年度で行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
流動抵抗の方向特性の解析は平成26年度で行うことができた。一方、局所的な浸透流れと中空糸まわりの濃度分極特性の解明に関して、理論モデルとその検証のシミュレーションを行う。 モジュール内の流れに関しては、当初予定の通り浸透し塩水と混合した流れの特性を、ベッセル表面付近の流れと濃度の分布を計測することで解明する。塩水流量、塩水圧力、塩分濃度を変化させて、次のシミュレーションにおけるモデル設定の妥当性を検討する。 モジュール全体の流動・浸透性能シミュレーションは平成26年度の研究から、従来より高精度で行うことができるようになった。これを、淡水側、塩水側の流れのマッチングが図られる流れ履歴を考慮したシミュレーションを行う。 さらに、高性能中空糸膜モジュールの中空糸・モジュール形状の提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備実験に予定以上の時間がかかり、さらに実験装置の改造の検討および設計に時間を要したこと。さらに、メーカーからの納入に時間がかかることから、H27年度当初ですでに、使用予定を組んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
中空糸の発注のために、メーカーとの打ち合わせを済ませて、仕様を決定している。新たな形状を作るために時間がかかるが、H27の前半には間に合うとの回答を得ている。 また、実験用のポンプについてもメーカーとの協議を済ませ、選定を済ませている。 これから、H26の繰り越し分についても使用計画として、すでに済ませている。
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