次世代の発電システムとして、海水と淡水の塩分濃度差を利用した発電がある。その実現へ向けて、本申請では次の2点から高性能膜モジュールの開発を行なった。1.塩水側濃度分極特性の解明とその低減。2.流れ履歴を考慮した淡水側流れと塩水側流れのシミュレーションマッチング。平成28年度は最終年度であり,この2点について,海水による発電に最適な膜モジュールの開発をすすめるための実現的な検討をおこなった。中空糸膜モジュールの性能向上解析を進めるために、ミニモジュールによる,濃度分極・有効膜面積の減少・偏流等がない理想状態における中空糸群の浸透性能を実験により調べた。その結果,膜モジュールでは,中空糸群の浸透能力に比べおよそ10分の1になることが明らかとなった。その原因は、濃度分極と有効膜面積の低下が主要な要因であることが明らかとなった。また、淡水側では濃度分極と流量不足が問題となる。これらのことを踏まえてモジュール形状を設定することが重要であることを指摘した。さらに,浸透流量が増加すると流れの偏流が重要な問題となり,最適形状の設定の重要性を示した。このような点を踏まえて最適化することにより、従来より約3倍の浸透性能が可能であり、塩分濃度が低い海水による浸透圧発電が可能であることを指摘した。さらに、その場合のモジュール形状と運転条件の関係を明らかにし、モジュールが大型化するにつれて塩水流量の増大が著しくなるが、その場合の直径と長さの関係が重要であることを指摘した。
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