研究課題/領域番号 |
26420887
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
堂脇 清志 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50339115)
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研究分担者 |
小井土 賢二 東京理科大学, 理工学部, 助教 (60611762)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオマスガス化 / 水素利用システム / SOFC(固体酸化物形燃料電池) / 硫黄分離技術 / ライフサイクルアセスメント指標 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、平成27年度においては、H2Sを含有した水素燃料によるSOFCの性能試験及びバイオマスガス化炉からの合成ガス中に含まれるH2Sの分離方法の検討、また、LCA指標を考慮した水素精製における加圧動力低減のためのCO2吸着システムの検討を行った。 最初に、SOFCの性能試験では、Elcogen社製のアノード支持型コインセルASC-10B(アノードNiO/YSZ、カソードLSC、電解質YSZ、電極有効面積1.77cm2)を用い、常圧下において温度を700または800℃とし、水蒸気添加量S/C比=0.97として実験を行った。実験に用いた燃料ガスの組成は、ガス化炉から生成される合成ガスを改質した後の組成を想定し、主に81%のH2、28.9ppmH2S及びその他のCO2等で構成される模擬ガスを利用した。この結果、H2Sを含有した燃料による発電実験では0.12Vの電圧降下を確認した。また、これらの結果から、バイオマスガス化方式の1つであるブルタワープロセスによるSOFC複合発電システム評価について、H2S濃度を0~80ppmと変化させた場合、23.4~19.8%-LHVの発電効率となる知見を得た。 次に、H2Sの分離方法については、ZnO、CaO、NiO、Fe2O3による吸着性能を検討した。これらの金属酸化物による破過時間を検証した。その結果から、プラント運転条件を勘案し比較的低い温度で脱硫が可能となるZnO及びFe2O3についてLCAによるCO2排出量を評価した。この結果、ZnOでは、40℃の場合、5.85 g-CO2eq/MJ-Syngasとなり、300℃では2.52 g-CO2eq/MJ-Syngasとなった。また、Fe2O3については、40 ℃で3.59 g-CO2eq/MJ-Syngas、120 ℃のとき0.85 g-CO2eq/MJ-Syngasの知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SOFCの実験においては、実験方法が確立し交流インピーダンス測定やSEMによる電極表面の観察が可能となった。このことから、H2Sを含有した燃料によるSOFCの特性に関する研究が進展している。また、H2Sの分離試験については、プラントの運転温度プロファイルを勘案した検討、すなわち、合成ガスの温度領域に対する触媒選択が可能となっており、今後は、さらに、その他の不純物除去の可能性についても検討することが可能となった。その他、低圧下による水素精製技術の検討については、実験データが得られ、これらのデータによるトータルシステムでの評価を行える状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
SOFCの試験については、耐久性の検証も含め、I-V特性取得のための実験を引き続き行う。なお、現在、燃料電池のLCAの検討が日本電機工業会で行われており、想定される機器に関する間接部分のCO2排出量についても検証し、燃料電池のLCAの評価指標について、ある程度の貢献を図りたいと考えている。また、H2Sの分離吸着については、現在、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性の層状粘土鉱物からなる複合体による性能を検討している。特に、ガス化炉内のプロセス条件により、この物質による吸着性能の向上が期待できるため、この試験を最終年度に実施し、バイオマス資源を利用する全体システムの中で燃料電池によるエネルギー生産において、最大どの程度までの環境性能を達成することができるのかを検証することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者である米国コネチカット大学エネルギー工学センターへの渡航旅費について、別途、本学の国際化支援による学内資金の補助があっため差額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
消費税率の上昇等に伴い、物品費やソフトライセンス料が値上げされいているため、それらの予算に充当する。
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