研究実績の概要 |
再生可能エネルギーへの期待が一層高まり、安全・安心な太陽光発電が注目されている。本研究では、稀少元素のInやGaを含まず、資源上の制約が少なく、原材料費が安価であるという利点を持っている、次世代型のCu2ZnSn(S,Se)4薄膜太陽電池の高性能化を目指して、成膜技術を検討することを目的とする。 実験Iでは、Cu2ZnSnSe4化合物を用いて、Se/Sn/(CZTSe+Na2Se)/Znに積層したプリカーサをS+Se雰囲気中で熱処理してCu2ZnSn(S,Se)4薄膜を作製した。熱処理時のS/(S+Se)=0.4一定で、S+Sの総仕込み量を変化させた。その結果、薄膜中のS/(S+Se)比を0.43~0.87まで制御できた。総仕込み量比0.25のサンプルで、開放電圧494[mV]、短絡電流8.06[mA/cm2]、変換効率1.08[%]の太陽電池特性が得られた。 実験IIでは、連続成膜法を用いてCu2ZnSn(S,Se)4薄膜を作製した。蒸着時のS量を増やすと、薄膜中のS量が増加し、薄膜中のS/(S+Se)比を制御できた。薄膜中のS/(S+Se)=0.45の時に、開放電圧244[mV]、短絡電流16.4[mA/cm2]、変換効率1.55[%]の太陽電池特性が得られ、昨年度の記録を更新した。 実験IIIでは、連続成膜法を用いて、S量=0のCu2ZnSnSe4薄膜を作製した。NaF添加の影響について検討した結果、NaF添加により結晶性が改善され、NaF/CZTSe=6.7[%]のサンプルで開放電圧274[mV], 短絡電流33.3[mA/cm2], 変換効率3.93[%]の本研究における最高効率が得られた。
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