研究課題/領域番号 |
26420889
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中武 靖仁 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30280481)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー節約・効率利用 / 低炭素化社会 / 超微細気泡 / ディーゼル機関 |
研究実績の概要 |
本研究は、ディーゼル燃料へ超微細気泡(マイクロ・ナノバブル)を混入させることで、燃焼改善すなわち燃費や有害排出ガスの同時低減が可能となり、環境負荷の低減へとつながることを明らかにしてきた。これまで燃料へ混入させる気体として、空気を用いてきたが、常温・常圧で空気より高い溶解性を有する炭酸ガス(二酸化炭素)を用いることで、ディーゼル機関の更なる燃焼改善を図り、燃費と有害排出ガスの同時低減について実験的に解明することを目的とした。 ナノサイズ炭酸ガス気泡による燃焼改善効果の向上として、本研究で採用するエジェクタ式による超微細気泡混入の効果は、より速く高効率に飽和溶存酸素量へ到達可能である。さらに、加圧溶解式とナノバブル発生ノズルを組み合わせたナノサイズの気泡は、飽和溶存酸素量よりも多くの溶存酸素量を含有させることが可能である。従って、超微細気泡混入法を複合利用することで、ナノサイズの気泡をより効果的に燃料に混入させることにより、さらなる燃焼改善、すなわち燃費と有害排出ガスの低減効果が期待される。そこで、ナノサイズ気泡混入の優位性を検討すべく、燃料の特性実験、ならびにエンジンベンチを用いた機関性能実験、および排気ガス成分分析を実験的に遂行した。 EGR燃料製造システムの設計に関して、ディーゼル機関でEGR(排ガス再循環)は主に、NOxの低減や部分負荷(エンジン回転で全負荷の出力を出さない点)時の燃費向上のために用いられている。実用的なことを鑑みると、炭酸ガスを排気ガスより供給することが最善と考えられる。また、排気ガス中の二酸化炭素を循環して使用できるため、排出CO2をさらに低減できる可能性があり、非常に有意義な研究となりえる。しかしながら、今年度は炭酸ガス燃料の生成方法に伴う、影響評価にほぼ従事し、EGR燃料製造システムは概念設計に留まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノサイズ炭酸ガス気泡による燃焼改善効果の向上については、混入気体として炭酸ガス、および比較対象としてこれまで使用実績のある空気を用い、気体抽入燃料の生成法、すなわちエジェクタ式の場合は、気体自吸圧(-0.08、-0.07、-0.06MPa)および加圧溶解方式の場合は、気体加圧力(0.02、0.1MPa)の差異がディーゼル機関の燃費や排ガス性能に、どの程度影響を及ぼすかについて重点的に検討した。さらに、燃料噴射圧の設定を任意に変更可能なコモンレール式燃料噴射方式(20~130 MPa)と機械式燃料噴射方式(燃料噴射圧20MPa)の2種類の燃料噴射方式についても検討を行った。これまでに得られた結果としては、混入気体としては炭酸ガス、気体自吸圧は-0.06MPaの条件において、負荷平均で約3%の燃費低減効果が求められ、排気ガス中のCO2濃度から算出されるカーボンバランス法により燃費低減効果量と概ね一致した。 また、炭酸ガス抽入燃料により僅かながらではあるが、CO、HC、NOx、スモークの減少も認められた。炭酸ガスが燃料中へ微細気泡、および溶解状態で混入することにより、燃料噴霧微粒化の促進、セタン価の向上による着火性の向上により、燃焼時間が短縮し、燃費と有害排出ガスの同時低減につながったものと推察される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験的研究を系統的、定量的に整理・発展すべく、まず、炭酸ガス抽入燃料を製造する装置・生成条件の差異による燃料の物理・化学的特性の解明について、燃料の物性変化と機関性能実験、燃焼解析および排気ガスカーボンバランス法と平行して遂行する。 ディーゼル機関性能実験では、燃料消費率、充填効率、騒音、トルク特性、排気ガス温度、排気エミッション(すす、NOx)、空燃比および筒内燃焼圧による燃焼解析などを比較測定し、燃料消費量および排気エミッションの低減評価を行う。筒内燃焼圧解析による熱発生率変化により、燃焼時間の短縮効果を検討する。 さらに、ナノサイズ炭酸ガス気泡による燃焼改善効果の向上について、ナノサイズ気泡混入の優位性を検討すべく、燃料の特性実験、ならびにエンジンベンチを用いた機関性能実験、および排気ガス成分分析を実験的に遂行する。
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