研究課題/領域番号 |
26420890
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
沼澤 健則 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導線材ユニット, 主席研究員 (30354319)
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研究分担者 |
松本 宏一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (10219496)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー輸送 / エネルギー貯蔵 / 水素 / 磁気冷凍 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでに不十分であった磁気冷凍の熱力学サイクルの解明に注力し、エネルギー効率のきわめて高い水素の液化や保持技術の確立を目的としている。50%を超える冷凍効率の実現を目指し、新しい磁気冷凍サイクルを検討・提案するとともに、その実証を試みる。 水素液化磁気冷凍においては磁性材料や冷凍サイクルの研究が主要項目となるが、本研究では水素液化磁気冷凍サイクルの解析と実証に注力する。ここでは、水素予冷用蓄冷型サイクルと液化サイクルとを組み合わせた複合サイクルについて重点的に調べる。研究手法としては、冷凍サイクルシミュレーションを用いた磁気冷凍熱力学の理論的解明と、これに基づいた実験装置の構築・実証が柱となる。 平成26年度においては、高精度な水素磁気冷凍サイクルシミュレーションコードの開発に注力した。従来、磁性材料の磁化や比熱等の諸特性の計算において、作動温度領域で平均化し、温度依存性や磁場依存性を大幅に簡略していた。これによる弊害は、特に非線形性の大きくなる磁気転移温度近傍の特性がうまく再現できず、結果として、サイクルシミュレーションに誤差の累積を招き、実験結果の解析や予想における精度に課題があった。そこで、モンテカルロ計算手法を取り入れ、単純立方格子からなる仮想磁性体において諸特性の計算を試みた。その結果、比熱の急峻な変化等の非線形性を高い精度で再現できることに成功した。この計算手法を冷凍サイクルシミュレーションにリンクさせ、磁性材料の特性を反映させるように、計算コードを開発中である。また、熱伝達特性を明らかにするため、磁場中での熱流変化を調べるための治具を作成し、シミュレーションに反映させるようにデータを取得中である。これらの結果の一部は、低温工学・超電導学会等で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モンテカルロ計算手法を取り入れた磁性材料のシミュレーションは、従来困難であった非線形性の再現を可能とし、予想を超える成功を収めつつある。これを実際のサイクルシミュレーションに取り入れる作業が進行中である。また、サイクルシミュレーションにおいて不明確であった磁場中の熱流特性を、新しい治具を用いて測定し、シミュレーションにフィードバックすることが可能となった。以上から、達成度としては総じて予定通りの進行と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
モンテカルロ計算手法は系を大きくすると計算量が膨大となるため、既存のワークステーションではかなりの時間がかかることがわかった。今後、複雑な構造の磁性材料に適合させるため、当機構で保有するスーパーコンピュータの活用を図る予定である。
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