水素吸蔵材料の高機能化を目指す研究として量子ビーム(イオン・電子線・レーザーなど)照射を利用した材料表面改質を欠陥デザインさせることにより水素吸蔵の吸蔵能向上を図り、かつそれら水素吸蔵と材料表面に与える影響を調べることを目的とした。 初年度は、電気化学的充放電測定による水素吸蔵初期反応速度測定装置を構築した。この測定装置を利用し、酸素イオンビーム照射前後の水素吸蔵、未吸蔵の水素吸蔵初期反応速度(以後、反応速度)測定を実施し、イオン照射エネルギー依存性が確認できた。これら成果については学会発表3件(国際会議2件)にて報告した。 2年目において、短パルス(ナノ秒、フェムト秒)レーザー照射による各フルエンス(単位面積当たりのレーザー照射エネルギー量)とその水素吸蔵能変化について調べた。また複数回の水素吸放出を繰り返した水素吸放出実験も実施し、それらSPring-8(BL22XU)のX線回折やXPS(X線光電子分光分析法)を用いてサンプル表面構造変化について歪み測定や表面状態分析を通して、レーザー照射と水素吸蔵能変化の相関を調べた。ナノ秒とフェムト秒レーザー照射では、そのパルス幅の違いにより吸蔵能変化を得ることができた。この変化は格子間において歪みが生じ、吸蔵能変化に与えた影響と考えられる。研究成果は査読付雑誌論文3件、学会発表7件(うち招待講演3件、うち国際会議3件)にて報告した。 最終年度では、MeVエネルギーの電子線照射による水素吸蔵能変化について調べ、併せて、従来手法の化学処理も実施することで、相乗効果についても調べた。その結果、表面仕事関数が未照射に比べ負側にシフトしていることから希土類酸化物間での電子の授受が容易になり、水分子の解離が促進され、結果反応速度が向上したと考えられる。研究成果は学会発表3件(うち国際会議1件)にて報告した。
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