研究課題/領域番号 |
26430002
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 康彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70290913)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経生理学 / カハール間質核 / 局所興奮性神経回路 / 視線制御 / 眼球運動 / パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
脳幹のカハール間質核(INC)は垂直系の視線制御に関与しており、眼球速度信号を位置信号へ変換する神経積分器としての役割があることが示されている。これまで、水平眼球運動系の神経積分器である舌下神経前位核(PHN)では局所興奮性神経回路が神経積分器の機能に重要であることが示されているが、INCでは神経回路に関する知見がきわめて乏しい。本研究では、INCの局所神経回路の様相を明らかし、PHN神経回路との比較により、神経積分器の神経回路の特性について明らかにすることを目指している。本年度は、PHNで行われた実験と同様な方法を用いて、記録しているニューロンの近傍へ一過性の高頻度電気刺激(バースト刺激)を与えることで興奮性シナプス後電流(EPSC)の発生頻度が増加するのかを調べた。生後約3週齢のラットからINCを含む脳スライス標本を作製し、INCニューロンからホールセル記録を行い、その近傍にバースト刺激(100 Hz、20パルス)を与えた時のEPSCの発生頻度の変化を調べた。その結果、バースト刺激後のEPSCの発生頻度が刺激前に比べ高くなり、1秒以上持続した(1.4±0.8秒、n = 5)。この持続時間は、PHNにおけるEPSCの持続時間(2.1±0.9秒、n = 8)と比べ有意な差は見られなかった(p = 0.2)。しかし、刺激前2秒間のEPSC頻度に対する刺激後1秒間のEPSCの頻度の比をくらべると、INCの頻度(5.3±3.7)はPHNの頻度(13.5±8.1)より有意に低かった(p = 0.028)。このことから、INCはPHNのように興奮性神経回路は存在するが、刺激によって駆動されるニューロンや神経回路の規模に違いがある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は昨年10月に奈良医科大学へ異動があり、異動後の研究室のセットアップや研究機関内での実験計画の申請に時間がかかったため、昨年度後半は研究遂行が不可能な状況であった。それにより、研究計画の主要な項目については明らかにすることはできたが、そのメカニズムの解明のための薬理学的解析などを行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に用いる実験セットのセットアップが完了したことから、早急に本研究計画の遂行に取り掛かるつもりである。昨年度の研究により、INCでも局所興奮性結合が存在する可能性が示唆されたが、その活性化のメカニズムがPHNにおいて観察された「カルシウム透過型AMPA受容体とカルシウム依存性非選択的カチオンチャネルの活性化」によるメカニズムと同様かどうかを検討する。そのために、今回のような実験プロトコルに薬理学的解析を加え、EPSCの持続時間の解析と共に、その頻度や総電流量なども解析していく計画である。
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