研究課題/領域番号 |
26430003
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
安田 浩樹 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60294071)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PKN / 代謝型グルタミン酸受容体 / グルタミン酸トランスポーター / 行動 / ストレス |
研究実績の概要 |
プロテインキナーゼN (PKN)は免疫系や癌細胞の転移等に関与していることが近年報告されている。中枢神経系にはPKN1が広く発現しているにもかかわらず、これまで機能が明らかなになっていない。そこで私たちは神戸大学バイオシグナル総合研究センター・向井秀幸准教授の開発したPKN1aノックアウト(KO)マウスを用いて、海馬におけるPKN1の機能を検討した。 まず最初にPKN1a KOマウスから海馬スライス標本を作り、シナプス伝達機能を解析したところ、CA1領域において野生型では観察されない、入力非特異的な代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)依存性長期抑圧(LTD)が誘発された。また、海馬歯状回において野生型に比べてmGluR依存性興奮性が亢進していた。さらに水泳ストレス負荷した野生型マウス歯状回においても同程度の興奮性亢進が見られた。KOマウスフェノタイプは野生型においてグルタミン酸トランスポーター阻害によって観察されるとともに、PKN活性抑制によって神経型グルタミン酸トランスポーター(EAAT3)活性が低下していることから、PKN1aはEAAT3活性を上昇させることによって細胞外グルタミン酸を取り込み、mGluR活性を正常化していることが明らかになった。 そこで本研究課題では、①PKN1aによるEAAT3活性制御メカニズムと、②PKN1aがEAAT3活性を上昇させることによってmGluR機能を正常化することがマウス行動に関与しているか、PKN1a KOマウスを用いて検討した。①に関しては、PKN1a KOマウスと、ストレス負荷野生型マウスにおいて、EAAT3蛋白量が低下していることから、PKN1aはEAAT3発現を増加させることが示唆された。また、②については行動実験によってPKN1aマウスは不安が低下していることから、PKN1aはマウスに慎重さをもたらすことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の上記研究概要②マウス行動におけるPKN1の役割について、交配によって野生型およびPKN1a KOマウスを増やして行動実験に使用している。ストレス負荷の条件決定などの際に多数のマウスを使用する必要があり、マウス交配が実験にやや追いついていない感があり、実験が遅延気味である。行動実験で多数のマウスを使用するために、①の生化学実験に使用するマウスがいなくなるので、こちらも遅延気味である。
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今後の研究の推進方策 |
上記①EAAT3発現を検討する生化学実験、および②PKN1aの行動における役割をマウス行動実験を完了させて、論文を再投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の研究概要②マウス行動におけるPKN1の役割について、交配によって野生型およびPKN1a KOマウスを増やして行動実験に使用している。ストレス負荷の条件決定などの際に多数のマウスを使用する必要があり、マウス交配が実験にやや追いついていない感があり、実験が遅延気味である。行動実験で多数のマウスを使用するために、①の生化学実験に使用するマウスがいなくなるので、こちらも遅延気味である。そのために、消耗品の購入ペースが低下して、予算使用が予定より少なくなり、残額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
上記①EAAT3発現を検討する生化学実験、および②PKN1aの行動における役割をマウス行動実験を継続するために、生化学実験の消耗品等に充当する予定である。
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