研究課題
近年腹側被蓋野や前頭前野など、気分や不安を制御する領域において、ストレスが興奮性を変化させてうつや不安が誘発されると報告されている。海馬歯状回もそのような領域の一つであるが、申請者はこれまで海馬歯状回において、頻回水泳 (8-15分/日を5-10日) が代謝型グルタミン酸受容体に依存した、興奮性神経細胞である顆粒細胞の興奮亢進を誘発することを見いだした。 さらに頻回水泳によって神経型グルタミン酸トランスポーター (EAAT3) 発現が減少することから、細胞外グルタミン酸濃度が上昇して代謝型グルタミン酸受容体を活性化することによって興奮性亢進が生じると考えられる。さらにストレスによる代謝型グルタミン酸受容体に依存した興奮性亢進は、神経細胞に存在するリン酸化酵素 protein kinase N 1 (PKN1) ノックアウトによって再現される。PKNはアラキドン酸や不飽和脂肪酸等で活性化されるprotein kinase C類似のリン酸化酵素で、中枢神経系には主にPKN1が主に神経細胞に局在して存在している。申請者は神戸大学・向井秀幸准教授らによって作成されたPKN1 KOマウスを用いて上記の結果を得た。一方で行動実験で頻回水泳は、野生型マウスにおいて高架式迷路において不安を軽減すること、さらにPKN1 KOマウスにおいて不安が抑制されていたので、歯状回におけるEAAT3発現低下による代謝型グルタミン酸受容体活性上昇は、軽度ストレス時に不安を和らげる一種の「ストレス緩衝作用」を誘発している可能性がある。
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Nature Communications
巻: 8 ページ: 15800~15800
10.1038/ncomms15800
Genes to Cell
巻: 22 ページ: 220~236
10.1111/gtc.12470