研究課題/領域番号 |
26430006
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
川戸 佳 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (50169736)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経内分泌学 / 脳ステロイド / 海馬 / シナプス / 記憶 |
研究実績の概要 |
(1)海馬スライスの神経シナプスを可視化して、共焦点顕微鏡で3次元像を解析することで、性ホルモンによる神経スパインの急性的non-genomicな増減の解析を行った。海馬スライスのCA1領域(空間記憶にかかわる)のグルタミン酸神経において、「エストラジオールE2 の2時間短期作用では: 神経スパイン内にあるE2受容体ERaとERbに結合 → MAPK, PKA, PKC, PI3K のリン酸化→ cortactin(アクチン制御蛋白)のリン酸化→ アクチン重合→ スパインが増加する」経路があり、更にLIMKを経由する「E2がERaとERbに結合 →LIMK のリン酸化 → cofilin(アクチン制御蛋白)のリン酸化→F-アクチン分裂の抑制 →スパインが増加する」経路もあることを発見した。 (2)海馬スライスのDG領域(神経新生が起こる)のグルタミン酸神経においても、CA1 とよく似たE2の駆動する信号系があり、スパインが増加することを見出した。DG領域のグルタミン酸神経では、E2によるスパインの変動は無いというのが世界の常識で、これを覆した。 (3)「海馬スライスでの男性ホルモンT, DHT の2時間短期作用では: 神経スパイン内にある男性ホルモン受容体ARへの結合 → LIMK, MAPK, PKA, PKC のリン酸化 →アクチン制御蛋白(cofilinや cortactin)のリン酸化 → アクチン重合 → スパインが増加する」であることを発見した。信号系はE2作用とかなり似ていたが、PI3K が関与していないところが、E2作用と異なっていた。 (4)多電極電気生理法を海馬スライスに適用し、 E2を合成する酵素 P450arom を30分間阻害するだけで、長期増強 LTPが抑制されることを見出した。ここに並行してE2を灌流しておくと、LTPは阻害されない。これはスライス中で早いE2合成起こっていて、LTP成立に重要であることを示している。この海馬スライスに、男性ホルモン DHT を加えて相互作用を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(理由)初年度と次年度で第一目標とした、女性ホルモンと男性ホルモンが、短時間で海馬の神経シナプスを増加させるメカニズムを解明したことに加えて、これらを論文にまとめて一流誌に投稿して、有力な雑誌の特集号に6報の論文が掲載出来たからである。平成28年度には有名な2つの国際会議に招待講演を依頼されている。International Congress of Endocrinology(北京)とINTERNATIONAL MEETING ON: "STEROIDS AND NERVOUS SYSTEM"(トリノ・イタリア)である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に交付請求書に書いた研究計画どおりに進めてゆく方針である。 ただ初期の方針では、「1年目の平成26年は実験に集中し、平成27年と平成28年には、実験を少なくして行って、むしろ結果をまとめて、英語論文として投稿し一流誌に採択されることを目指す」計画だった。しかし、これを変更して、平成26年と平成27年中にも、個々の研究成果を英語論文で投稿し出版を行った。このように、実験の途中でも論文を書くために、実験研究を3年目にもかなり行うことにした。今年は、国際会議で招待講演を行い討論し、我々の発見した女性ホルモンと男性ホルモンが神経スパインを急性的non-genomicに増減させている機構を、世界の代表的学者に周知させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)27年度も論文を執筆して投稿していたために、27年度の実験の計画の一部を翌年回しにしたために、実験経費も翌年に回したため。
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次年度使用額の使用計画 |
(使用計画)当初計画では、1,2年目に実験を集中して完了して、3年目にはほとんど実験せず、論文執筆、投稿、掲載に集中する計画だった。これを変更して、実験を3年間毎年行うこととし、また、毎年論文を書くことにした。そのために経費も1,2,3年目にほぼ均等に振り分けることとした。
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