研究課題/領域番号 |
26430008
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
相澤 秀紀 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (80391837)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | うつ病 / 睡眠 / 手綱核 / モノアミン / グルタミン酸 / 輸送体 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
マウス手綱核におけるグルタミン酸過剰がうつ病様行動及び睡眠障害に果たす役割を明らかにするため、平成26年度は主に、1)手綱核特異的 GLT-1 欠損マウスの作成及び2)手綱核神経細胞の興奮性変化を検討した。手綱核の過剰活性化を引き起こすため、GLT-1条件的欠損マウス(floxed GLT-1)の手綱核に Cre 発現アデノ随伴ウイルスベクターを注入し、手綱核特異的GLT-1欠損マウスを作成した。遺伝子改変の蛋白質発現における影響を免疫組織化学により検討したところ、ウイルス注入から4週間後にはGLT-1蛋白質の手綱核特異的な減少が確認された。GLT-1蛋白質は細胞外グルタミン酸をアストロサイトの細胞内へ取り込み手綱核神経細胞の興奮性を制御すると考えられる。そこでGLT-1蛋白質の減少による手綱核神経細胞の電気活動における影響を検討するため、麻酔下の手綱核特異的GLT-1欠損マウスを用いてシングルユニット記録を行った。実験の結果、手綱核特異的GLT-1欠損マウスは対照群と比較して有意に高い発火頻度を示しており、手綱核の過剰活性化を引き起こしていることが示唆された。さらに、このような手綱核の病的活性化が動物行動に与える影響を行動学的解析により調べたところ、手綱核特異的GLT-1欠損マウスは対照群と比較して、尾懸垂試験やnovelty-suppressed feeding試験、社会回避行動試験などのうつ病様行動関連行動において増悪傾向をしめしており、うつ病様行動異常がうかがわれた。また、睡眠解析の結果、これらの手綱核過剰活性化マウスはうつ病の中間表現型として注目されるレム睡眠の脱抑制をしめしていることが明らかとなった。これらの研究結果をまとめて、Journal of Neuroscience誌へ発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題に掲げた1)手綱核特異的 GLT-1 欠損マウスの作成及び2)手綱核神経細胞の興奮性変化の検討は予定通りに行う事が出来た。その結果得られた遺伝子改変マウスについて行動学的解析及び電気生理学的解析を行い興味深い結果を得ているため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに手綱核の過剰活性化をウイルスベクターの注入により引き起こす事に成功し、これらの遺伝子改変マウスがうつ病様の行動障害を引き起こす事を明らかにした。また、このような単一神経回路の機能異常がうつ病で多く報告されるレム睡眠に異常を引き起こす点で、本研究のこれまでの成果は興味深いが、その神経機構については未だ不明な点が多く残されている。特にこれらの行動・睡眠異常の発生機構や関与する神経伝達物質については未だ同定されていないため、今後の研究ではこれらの問題解決にあたる予定である。
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