研究課題
これまでに手綱核の過剰活性化を示すマウスがうつ病様行動異常とともに、レム睡眠の脱抑制を示すことを報告した。外側手綱核はドーパミンやセロトニンなどのモノアミン作動性細胞の豊富な脳幹部へ直接的および間接的な神経結合をもっており、外側手綱核は脳内におけるこれらモノアミン代謝の修飾を介して行動や睡眠活動へ影響を与えると考えられる。興味深いことに、哺乳類の手綱核神経細胞はノンレム睡眠時には持続性の発火パターンを示すのに対し、動物がレム睡眠へ入ると5-8 Hz程度のシータ領域で律動活動を示す様になる。モノアミン神経系の高次中枢に位置する手綱核がレム睡眠と同期して示すこれらの律動活動は、睡眠の制御に関与する可能性が高い。実際、報告者の以前の研究によるとラットにおける手綱核破壊実験ではレム睡眠持続時間の減弱を示していた。この問題に取り組むため、本年度は外側手綱核における活動パターンが前脳におけるモノアミン放出に与える影響を調べた。外側手綱核へ光遺伝学的プローブChR2-EGFPをアデノ随伴ウイルスベクターにより導入し、持続的およびシータリズムによる手綱核活性化した。モノアミン放出に与える影響は前年度までに開発した電気化学的モノアミン測定法(ボルタンメトリ法)を応用し腹側線条体におけるドーパミン放出量を定量的に評価した。実験の結果、持続的な手綱核の活性化はドーパミン放出の一時的な減少を引き起こした。一方、興味深いことにシータリズムにおける律動的な手綱核の活性化は、線条体におけるドーパミン放出の減少を多くの場合引き起こさず、むしろ一時的な増加が観察された。これらの事実は手綱核からドーパミン作動性神経細胞へ至る経路が複数存在することによると考えられ、今後の研究により経路特異的な脳内ドーパミン代謝の制御機構が解明されるものと期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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