研究課題/領域番号 |
26430011
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
菱田 竜一 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (90313551)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / 生理学 / 可視化 / 認知科学 |
研究実績の概要 |
1、2光子顕微鏡in vivoカルシウムイメージングを使った選択フィルター特性の解析。一次視覚野の神経細胞の方位選択性や方向選択性を測定した。GAD-GFPマウス(抑制神経細胞に緑色蛍光蛋白質GFPを発現している遺伝子改変マウス)を使用することで、興奮性および抑制性神経細胞を同定・区別して解析した。頭頂領域から視覚野への大脳皮質内抑制性投射経路を切断した直後のマウス(急性群マウス)、切断後3週間以上の回復期をおいたマウス(慢性群マウス)、および切断していないマウス(対照群マウス)での結果を比較・検討した。興奮性神経細胞の方位選択性は急性群マウスでのみ低下が見られた。この結果は、抑制性投射経路が方位選択性の形成には関係しないが、モジュレーションに関与していることを示唆していた。一方、興奮性神経細胞の方向選択性は急性群マウスおよび慢性群マウスにおいて低下が見られ、抑制性投射経路が方向選択性の形成に働いていることを明らかにした。さらに、抑制神経細胞の方位選択性は抑制性投射経路の切断に影響されないという結果を得られた。これは、視覚野抑制応答のメカニズムとして想定していた、視覚野抑制性神経細胞の活性化という単純なモデルでは説明できず、研究課題の将来的な展開にとって重要な知見が得られた。 2、頭頂連合野から視覚野への抑制投射経路の形態解析。頭頂連合野に順行性トレーサーを注入して解析したところ、前帯状回・背側線条体・視床の背側外側核・後外側核へ投射していた。それら各部位を電気刺激したところ、前帯状回・背側線条体では視覚野に抑制応答が、背側外側核・後外側核では逆に興奮性の応答が見られ、視覚野抑制のメカニズムとその機能を明らかにするうえで極めて重要な成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画での実行順序を変更して、2光子顕微鏡カルシウムイメージング実験とトレーサー注入実験を優先的に進めてきたが、それらの実験からその後の研究の進展を左右する重要な成果を得られた。一方、後回しにした「2音弁別学習システムを用いた注意機能の行動解析」と「ペアリング刺激による選択フィルターの形成実験」の準備は進行中であり、無理なく実行できると考えている。以上のように実験予定に変更があったが、全体を見渡して検討し、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1、まずは機器の購入等が終了している「ペアリング刺激による選択フィルターの形成実験」を行う。光遺伝学に使用するアデノ随伴ウイルスベクターの納品が遅れているため、金属電極を使ってのペアリングを試みてみる。 2、「2音弁別学習システムを用いた注意機能の行動解析」あるいはこれを改変した行動実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
光遺伝学に使用するアデノ随伴ウイルスベクターをペンシルバニア大学に注文したが、在庫がなかったため納品が遅れており、使用する予定であった研究費が未使用となったから。
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次年度使用額の使用計画 |
光遺伝学に使用するアデノ随伴ウイルスベクターの購入に使用する。
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