研究課題
小脳プルキンエ細胞に発現する1型代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は運動学習を支えるシナプス可塑性である小脳長期抑圧のトリガーである。我々はこれまでの研究で、mGluR1がB型γ-アミノ酪酸受容体GABAbRと相互作用し、これによって小脳長期抑圧が促進されている可能性を示してきた。本研究では還元的実験系(GABAbR, mGluR1を強制発現させたHEK-293細胞)に表面プラズモン共鳴および蛍光Ca2+イメージングを適用してmGluR1連関細胞内シグナリング(MGCS)を測定し、相互作用の分子機序を調べた。mGluR1アゴニストDHPGを細胞に投与すると、MGCSの活性化が起こった。30 nMのGABAbRアゴニストbaclofenを事前投与すると、DHPGに誘発されるMGCSの振幅が50-500 %増大した。GABAbRに共役するGi/oタンパク質を百日咳毒素によって阻害してもbaclofenの作用が見られた。Gi/oタンパク質活性剤mastoparanではbaclofenの効果を模倣できなかった。Bioluminessenceアッセイによって百日咳毒素およびmastoparanが実際にGi/oタンパク質をそれぞれ抑制、活性化していたことを確認した。GABAbRを構成する2種類のサブユニットのうち片方だけを発現させた細胞では、baclofenによる作用は見られなかった。内在性アゴニストGABAでGABAbRを活性化してもMGCSの増大が起こり、解離定数は63 nMであった。これらの結果は、i) GABAbRとmGluR1はニューロン特異的細胞内環境に依存せず相互作用すること、ii) 相互作用の仲介にはセカンド・メッセンジャーが重要でないこと、iii) 脳髄液に蓄積する10 nM~10 uMのGABAの濃度変化によって相互作用が動的に誘発されることを示唆している。
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Heart and Vessels
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10.1007/s00380-018-1116-6
http://www3.u-toyama.ac.jp/biophys/index.html