研究課題/領域番号 |
26430014
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
棚橋 浩 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (90236654)
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研究分担者 |
鈴木 龍雄 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80162965)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経可塑性 / シナプス / 合指多指症 / 歯数過剰 / 不正咬合 / 腎臓欠失 / 羊水過多 / アクアポリン |
研究実績の概要 |
Lrp4KOマウスは出生直後に呼吸不全で死亡し合指・多指症を呈した。多くのKOマウスに両方 (53匹/191匹) 、片方 (81匹/191匹) の腎臓の欠損が見られた。E17.5 KO胎児では1.30倍、E18.5 KO胎児では2.76倍の羊水過多が見られた。羊水は主として胎児腎臓で作られた尿が羊膜腔に排出されたものと考えられてきたが、E17.5, E18.5 KO胎児は腎臓の有無に拘らず羊水過多が見られた。またE18.5羊水の浸透圧はKO胎児において有為に低かった。そこでLrp4+/-♂と交配した妊娠Lrp4+/-♀19dpcの子宮に墨汁を注入し30分後に胎児を取り出し固定後、胎児の肺、胃腸を調べたところ、コントロールとなるLrp4+/+、Lrp4+/-胎児では墨汁の取り込みが見られたのに対しLrp4KO胎児では見られなかった。 羊水中の肺サーファクタント蛋白Aは胎盤からも分泌されるが、その多くは胎児の呼吸様運動によって胎児の肺から羊水中に分泌される。そこでE18.5の羊水中の肺サーファクタント蛋白Aを調べると肺胞液の羊膜腔への分泌がないKO胎児羊水中の肺サーファクタント蛋白Aはコントロール胎児と比べて43%まで減少していた。また肺胞液中に比較的多く存在するClイオンの濃度はKO胎児では有為に低かった。KO胎児に消化管閉塞は見られなかった。 これらの事からKO胎児は呼吸様運動・嚥下ができない事が解った。さらに羊膜腔からの水の取り込みに関与する卵膜上のaquaporin 9、胎盤上のaquaporin 1 mRNAを定量するとE17,5、E18.5では KO胎児において有為な発現低下が見られた。以上の結果から羊水の羊膜腔からの排出(嚥下、卵膜からの吸収)に異常を生じ、腎臓が無いにもかかわらず羊水過多になったと考えられる。人においても稀なケースだが重症筋無力症の胎児で嚥下障害により羊水過多をおこす例が報告されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LRP4のconventional KOマウス、神経幹細胞特異的(Nestin-Cre)条件付きKOマウス、前脳特異的(CaMK2a-Cre)条件付きKOマウスを作製でき、それぞれのKOマウスにコントロールと異なる表現型を見つける事ができた。これらの事から当初研究計画は、おおむね順調に進展している。 当初計画以外の進展としてKO胎児に羊水過多が見られた。KO胎児は呼吸様運動・嚥下ができない事が解った。さらに羊膜腔からの水の取り込みに関与する卵膜上のaquaporin 9、胎盤上のaquaporin 1 mRNAを定量するとE17,5、E18.5では KO胎児において有為な発現低下が見られた。以上の結果から羊水の羊膜腔からの排出(嚥下、卵膜からの吸収)に異常を生じ、腎臓が無いにもかかわらず羊水過多になったと考えられる事等があげられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.オープンフィールドテストを行い活動量から不安・恐怖の評価を行う。2.T字迷路遅延交替反応テストを行い一時的な記憶を見る作業記憶には問題ないか調べる。3.文脈恐怖条件付けと手掛かり恐怖条件付けテストを行なう。マウスを箱の中に入れて音を出し、電気ショックを与えという条件付けを行い、翌日、そのマウスを同じ箱に入れ文脈恐怖条件付けテストを行う。次に形や壁が違う別の箱で手掛かり刺激音を出し手掛かり恐怖条件付けテストを行う。同様のテストを条件付け1週間後にも行い記憶が保持されているか調べる。4.長期的に有効な情報についての記憶である参照記憶を見るモリス水迷路テストを行う。恐怖条件付けテストと空間ナビゲーション学習に必要とされる感覚運動機能は完全に異なるため重複する手続きがなく同一のマウスを恐怖条件付けテスト、モリス水迷路テストで評価できる。5.尾懸垂テストを行い鬱傾向を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度未使用額が12万9,634円あるが、これは当初計画で見込んだよりも安価に物品の購入ができた事、一部購入物品の納品日が次年度となった事、当初計画では海外出張を本年度実施予定であったが、研究の進歩状況により次年度実施する事が次年度使用額を生じた原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は殆ど動物飼育費、消耗品の購入に用いる。
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