研究課題/領域番号 |
26430017
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
猪口 徳一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60509305)
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研究分担者 |
森 泰丈 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00343252)
尾身 実 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (00400416)
佐藤 真 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (10222019)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経科学 / 解剖学 / 発生・分化 / 神経回路 / 軸索側枝 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒトで高度に進化し、大脳と小脳の協調的な神経活動を担う橋核への側枝形成をモデルにその分子基盤を解き明かすことを目的とする。 平成27年度は、これまでのスクリーニング結果から、側枝形成への関与が示唆された6つの候補受容体に対して、ノックアウト(KO)マウスの解析を進めた。その中でノックダウン(KD)およびKOマウスで共に側枝伸長促進と投射の乱れが見られた受容体(#13)に着目し、既知の反発性リガンドと共に発現解析を行い、これら受容体とリガンドは皮質・橋核・小脳で相補的な発現パターンを示すことを見出した。そこで、それぞれを大脳皮質でKDし橋核への側枝を詳細に調べると、側枝伸長促進と共に、橋核における互いの発現領域へ側枝が進入している様子が観察された。逆に、受容体の皮質脊髄路での過剰発現はリガンドが発現する橋核尾側領域への側枝伸長が阻害され、また、リガンドの橋核での過剰発現は、大脳皮質受容体発現領域からの側枝形成を阻害した。このことより、これら分子によって皮質特定領野と橋核特定領域を結ぶ側枝の投射が制御されていることが示唆された。 また、当初の実験計画に則り、皮質脊髄路傷害時の代償機構としての軸索側枝形成について、上記で得られた、KOマウスで側枝伸長促進が見られた受容体(#13)の関与を調べた。KOマウスで片側運動野傷害モデルを作成し、Biotinylated dextran amines (BDA)を健常側大脳皮質運動野に注入することで皮質脊髄路をトレースし、4週後に脊髄切片を作成し、正中を越えて傷害側へと伸びる側枝の数をWTと比較した。すると、KOマウスにおいて正中を越えて伸びる側枝の数が増加する傾向が見られた。このことより、代償機構としての軸索側枝形成にも受容体(#13)が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標である、スクリーニングで得られた候補受容体とそのリガンドについての側枝形成における機能解析を行い、側枝の投射パターン形成への関与を示唆する結果を得た。また、研究計画書に則り、障害時の代償機構としての側枝形成についての実験を行い、上記で得られた受容体(#13)の関与を示唆する結果を得た。以上、平成27年度の当初の実施計画に沿った研究を行い、一定の成果を得ていることから、目標に対して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、受容体(#13)とリガンドについて、皮質・橋核・小脳での発現パターンと側枝投射領域との関係をより強く示すために、詳細なイメージングと定量を行う。具体的には、透明化した組織を、共焦点顕微鏡やlight sheet 顕微鏡で撮影することで、橋核と軸索側枝を立体構築し、KOや過剰発現、受容体の阻害時などの各条件で投射領域の変化について定量・比較を行う。さらに、それら分子の発現領域を決定する転写因子等の分子メカニズムの解明を行う。また、側枝形成時期の皮質脊髄路における受容体とリガンドの局在を調べるため、タグ融合蛋白質を発現させ、組織免疫染色を行う。代償機構としての側枝形成については、傷害時に受容体(#13)に働きかけるリガンドを探索すると共に、傷害時の発現量変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験について次年度にまたがって研究を行う必要が生じたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
受容体(#13)と、そのリガンドについて、皮質・橋核・小脳での発現パターンと橋核での側枝投射領域との関係を調べるために、神経細胞トレース用色素、in situ hybridization用試薬類、透明化試薬類、細胞培養に用いる培地・血清、プラスティック器具の費用、抗体作成に必要な費用を計上している。また、作成したKOマウスの維持費と、生体内でのアッセイに用いる妊娠マウスの購入費を計上している。他に、成果発表および情報収集のための学会参加費用、論文投稿に必要な費用を計上している。
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