研究実績の概要 |
本研究は「ふたつの脳の進化」をキーワードとし、その進化を導くための鍵革新となった発生機構を明らかにすることを目的とする。平成26年度は脳形成遺伝子を単離することを目的とし、スッポン、ニワトリ、ソメワケササクレヤモリで網羅的に遺伝子の探索を行い、終脳形成並びに視床から終脳に入力する経路の形成に関わる遺伝子について、主要な遺伝子を得ることに成功した。これらの動物のうち、スッポンについては、視覚系をはじめ視床から終脳に入力する感覚神経を蛍光標識神経軸索トレーサー(デキストラン、NeuroVue)を用いて可視化することに成功した。そして、スッポンにおいて神経ガイドに関わる因子であるEphA4, ephrinA5, Slit2, Robo2, Sema3Aの発現と軸索走行のパターンを比較した結果、哺乳類に見られるものとは大きく異なっており、一方でニワトリに見られるパターンと類似していることが判明した。この結果から、本研究のテーマであるふたつの脳の進化に関して、視床から終脳に入力する神経ガイド機構については哺乳類と竜弓類(鳥類・爬虫類)でその仕組みが大きく異なっていることが明らかとなった。このことは、羊膜類の共通祖先から分岐した過程で、哺乳類と竜弓類という二つの系統で神経軸索をガイドする仕組みが独自に進化したことを示しており、平成26年度の研究では、脳の多様化をもたらす発生機構の一端を神経回路形成という視点から明らかにすることができたと考えられる。
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