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2015 年度 実施状況報告書

ふたつの脳の進化:哺乳類と竜弓類の終脳発生基盤の起源と変遷

研究課題

研究課題/領域番号 26430018
研究機関愛媛大学

研究代表者

村上 安則  愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50342861)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード進化 / 脳 / 脊椎動物 / 発生 / 遺伝子
研究実績の概要

平成27年度は「ふたつの脳の進化」を導くための鍵革新となった発生機構を明らかにするという目的の下で、哺乳類と竜弓類の脳の共通点と相違点について、当初の計画に基づいて研究を進めた。27年度はヘビ(コーンスネーク)の胚を得ることに成功し、それを用いて神経発生と遺伝子発現の両面から解析を進めた。その結果、当初に予想された通りヘビ胚の終脳形態はヤモリと極めてよく似ていることが判明した。しかしながら、ヘビの末梢神経の形態はヤモリとは異なる点が多く見られ、そのことが終脳など中枢の形態にも違いをもたらしている可能性が考えられたため、ヘビ脳をさらに詳しく調べる必要性が生じた。また、前年度に引き続き竜弓類の感覚系の発生機構を解析した。27年度にはヤモリを用いた解析を進め、次世代シーケンサーを用いた解析によりヤモリの神経ガイド因子、脳形成因子の配列を得た。それらの遺伝子について、ヤモリ胚の脳での発現様式を観察し、当初の予定に従って視覚系神経路について竜弓類と哺乳類での比較を進めた。その結果、ヤモリの終脳において視覚系神経路の線維を受ける場所で発現する遺伝子の発現様式が、哺乳類のそれとは大きく異なっていることが判明した。この結果を昨年度に得られていたカメの結果と併せて考えると、レムノタラミック経路を発達させた哺乳類とコロタラミック経路を発達させた竜弓類(カメ・トカゲ)においては視床-終脳のガイド機構が大きく異なっている可能性が考えられ、この違いが二つの脳の違いをもたらす鍵革新のひとつである可能性が考えられる。この仮説は羊膜類の外群である両生類の神経ガイド遺伝子の発現様式からも示唆される。これら研究成果は27年度に開催された三学会ならびに日本動物学会において口頭発表を行い、両生類の結果については論文を投稿、受理された(Tosa et al., Zoological letters, 2015)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた次世代シーケンサーを用いた解析結果を得ることができ、多くの遺伝子の発現様式の観察が可能となった。その結果、哺乳類と竜弓類で脳の形態の違いには、視床と終脳の間の神経入力に関わる遺伝子の発現様式の変化が大きく関わっている事を示す結果を得た。また、ヘビの受精卵を得ることに成功し、各発生段階の胚を用いた研究も成功したため、平成28年度は当初の予定通りに研究を進めることが可能であると考えられる。

今後の研究の推進方策

当初の予定通り、平成28年度には哺乳類と竜弓類の脳の違いをもたらす因子についての解析を進める。ニワトリへの電気穿孔法を用いた遺伝子導入は27年度中に行っており、今後はそれらの標本を用いて切片を作成し、領域マーカー遺伝子の発現様式が変化しているかどうかの解析を進める。ソメワケササクレヤモリについても遺伝子導入実験を開始している。技術的な点で改良が必要になれば、連携研究者の野村真博士に協力を仰ぎ、解析を進める。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Evidence from cyclostomes for complex regionalization of the ancestral vertebrate brain2016

    • 著者名/発表者名
      Fumiaki Sugahara, Juan Pascual-Anaya, Yasuhiro Oisi, Shigehiro Kuraku, Shin-IchiAota, Noritaka Adachi, Wataru Takagi, Tamami Hirai, Noboru Sato, Yasunori Murakami, Shigeru Kuratani
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 531 ページ: 97-100

    • DOI

      10.1038/nature16518.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The evolution of basal progenitors in the developing non-mammalian brain2015

    • 著者名/発表者名
      Tadashi. Nomura, Chiaki Ohtaka-Maruyama, Wataru Yamashita, Yoshio Wakamatsu, Yasunori Murakami, Federico Calegari, Kunihiro Suzuki, Hitoshi Gotoh, Katsuhiko Ono
    • 雑誌名

      Development

      巻: 143 ページ: 66-74

    • DOI

      10.1242/dev.127100.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Involvement of Slit-Robo signaling in the development of the posterior commissure and concomitant swimming behavior in Xenopus laevis2015

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiko Tosa, Kiyohito Tsukano, Tatsuya Itoyama, Mai Fukagawa, Yukako Nii, Ryota Ishikawa, Ken-Ichi T. Suzuki, Makiko Fukui, Masahumi Kawaguchi, Yasunori Murakami
    • 雑誌名

      Zoological letters

      巻: 1 ページ: eCollection

    • DOI

      10.1186/s40851-015-0029-9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 脊椎動物の脳の起源と多様化2015

    • 著者名/発表者名
      村上安則
    • 学会等名
      自治医科大学セミナー
    • 発表場所
      栃木県・下野市 自治医科大学
    • 年月日
      2015-10-26 – 2015-10-26
    • 招待講演
  • [学会発表] ナマズのひげと味蕾の形成にはFGFs及びShhシグナルが関与する2015

    • 著者名/発表者名
      糸山達哉, 土佐靖彦, 福井眞生子, 高田裕美, 村上安則
    • 学会等名
      第86回日本動物学会
    • 発表場所
      新潟県・新潟市 朱鷺メッセ
    • 年月日
      2015-09-17 – 2015-09-17
  • [学会発表] ヤツメウナギとトラザメの知覚性三叉神経の脳への接続2015

    • 著者名/発表者名
      石川遼太, 山上沙織, 土佐靖彦, 倉谷滋, 村上安則
    • 学会等名
      第86回日本動物学会
    • 発表場所
      新潟県・新潟市 朱鷺メッセ
    • 年月日
      2015-09-17 – 2015-09-17
  • [学会発表] ソメワケササクレヤモリの終脳形成に関わる遺伝子の発現解析2015

    • 著者名/発表者名
      平尾綾子, 土佐靖彦, 村上安則
    • 学会等名
      第86回日本動物学会
    • 発表場所
      新潟県・新潟市 朱鷺メッセ
    • 年月日
      2015-09-17 – 2015-09-17
  • [学会発表] トラザメ三叉神経感覚枝の後脳への入力:顎の神経支配の進化的変遷2015

    • 著者名/発表者名
      村上安則
    • 学会等名
      理化学研究所CDBセミナー Shark in Tree Phyloinformatic Challenges in Life Science
    • 発表場所
      兵庫県・神戸市・理化学研究所 神戸研究所
    • 年月日
      2015-06-19 – 2015-06-19
    • 招待講演
  • [学会発表] The role of FGF signaling in the developing lamprey pallum2015

    • 著者名/発表者名
      Yasunori Murakami
    • 学会等名
      日本発生学会 シンポジウム2 Vertebrtate brains: structure, function and evolution
    • 発表場所
      茨城県・筑波市 つくば国際会議場
    • 年月日
      2015-06-05 – 2015-06-05
    • 招待講演
  • [学会発表] The role of FGFs and Shh signaling in the craniofacial development of Amur catfish, Silurus asotus.2015

    • 著者名/発表者名
      糸山達哉, 土佐靖彦, 川中寅生, 村上安則
    • 学会等名
      第48回発生生物学会大会
    • 発表場所
      茨城県・筑波市 つくば国際会議場
    • 年月日
      2015-06-03 – 2015-06-03
  • [学会発表] ナマズの頭部形態形成における繊維芽細胞成長因子(FGFs)及びソニックヘッジホッグ(Shh)シグナルの役割2015

    • 著者名/発表者名
      糸山達哉, 土佐靖彦, 村上安則
    • 学会等名
      日本動物学会・中国四国地区生物系三学会合同大会
    • 発表場所
      愛媛県・松山市 愛媛大学
    • 年月日
      2015-05-17 – 2015-05-17
  • [学会発表] ヤツメウナギとトラザメにおける三叉神経知覚成分の後脳への投射;顎の神経支配の進化に関して2015

    • 著者名/発表者名
      石川遼太, 山上沙織, 竹内政智, 土佐靖彦, 平沢達矢, 倉谷滋, 村上安則
    • 学会等名
      日本動物学会・中国四国地区生物系三学会合同大会
    • 発表場所
      愛媛県・松山市 愛媛大学
    • 年月日
      2015-05-17 – 2015-05-17
  • [学会発表] 羊膜類の終脳発生機構2015

    • 著者名/発表者名
      平尾綾子, 土佐靖彦, 村上安則
    • 学会等名
      日本動物学会・中国四国地区生物系三学会合同大会
    • 発表場所
      愛媛県・松山市 愛媛大学
    • 年月日
      2015-05-17 – 2015-05-17
  • [図書] 脳の進化形態学2015

    • 著者名/発表者名
      村上安則
    • 総ページ数
      299
    • 出版者
      共立出版

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公開日: 2017-01-06  

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