研究課題/領域番号 |
26430024
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
池田 弘子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (70297844)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 摂食調節 / ドパミン神経 / ドパミン受容体 / 視床下部 |
研究実績の概要 |
本研究では、中枢による摂食調節機構を解明する目的で、摂食中枢として知られる視床下部外側野のドパミン神経による摂食調節機構を明らかにすることを目的としている。平成26年度の研究結果から、摂食により視床下部外側野のドパミン量が増加することや、視床下部外側野のドパミンD1およびD2受容体を刺激することにより摂食が抑制されることが明らかになった。 平成27年度は、視床下部外側野にドパミンD1およびD2受容体が存在することを確認するとともに、視床下部外側野へ投射するドパミン神経の投射様式を明らかにすることを目的とした。まず、ドパミンD1またはD2受容体に対する抗体を用いた免疫組織学的染色法により、視床下部外側野にドパミンD1およびD2受容体が存在することを明らかにした。また、視床下部外側野に逆行性トレーサーであるFluolo-Gold(FG)を投与したところ、FG陽性細胞は腹側被蓋野ならびに黒質緻密部に多数認められた。さらに、ドパミン合成の律速酵素であるtyrosine hydroxylase(TH)に対する抗体を用いて免疫組織学的染色法により検討したところ、腹側被蓋野ならびに黒質緻密部におけるFG陽性細胞の約半数がTH陽性を示した。これらの結果から、腹側被蓋野ならびに黒質緻密部から視床下部外側野へドパミン神経が投射し、視床下部外側野にドパミンD1およびD2受容体が存在することが明らかになった。 一方で、視床下部外側野へFGを投与すると腹側淡蒼球にもFG陽性細胞が認められた。腹側淡蒼球にはGABA神経が多数存在することから、腹側淡蒼球で認められたFG陽性細胞はGABA神経である可能性が考えられる。さらに、腹側淡蒼球は側坐核からの出力先であることから、この腹側淡蒼球を介して報酬に重要な役割を果たす側坐核が摂食中枢である視床下部外側野の機能を調節する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、平成26年度に視床下部外側野におけるドパミン神経ならびにドパミン受容体の摂食調節における役割について検討し、摂食行動により視床下部外側野のドパミン神経が活性化し、同部位のドパミンD1およびD2受容体を刺激することにより摂食行動が抑制されることを明らかにした。また、平成27年度は視床下部外側野へ投射するドパミン神経の同定を行い、概要欄に記載したとおり、腹側被蓋野および黒質緻密部から視床下部外側野へドパミン神経が投射することや、視床下部外側野にドパミンD1およびD2受容体が存在することを明らかにした。また、腹側淡蒼球から視床下部外側野へ投射する神経が存在することも明らかにした。腹側淡蒼球は側坐核の主要な神経投射先であることから、この結果は、平成28年度の研究課題として掲げた、報酬に重要な脳部位である側坐核が摂食中枢である視床下部外側野の機能を調節する可能性を示唆するものである。このように、平成28年度の研究課題が妥当であることを示唆する結果をすでに得ていることから、平成28年度分も問題なく計画通りに研究を進展できるものと確信する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究結果から、摂食により視床下部外側野のドパミン量が増加することや、視床下部外側野のドパミンD1およびD2受容体を刺激することにより摂食が抑制されることが明らかになった。また、平成27年度は腹側被蓋野および黒質緻密部から視床下部外側野へドパミン神経が投射することや、視床下部外側野にドパミンD1およびD2受容体が存在することを明らかにした。また、腹側淡蒼球から視床下部外側野へ神経が投射することも明らかにした。平成28年度はこの腹側淡蒼球から視床下部外側野への投射に注目し、この神経がGABA神経であるか検討し、摂食調節における視床下部外側野のGABA神経の役割について明らかにするとともに、側坐核が腹側淡蒼球を介して視床下部外側野の機能を調節するか否かについて、摂食調節機構の面から検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に当初の予定よりも効率よく実験できたため、28,186円が繰り越された。平成27年度は消耗品費が1,312,320円であり、ほぼ当初の予算(1,300,000円)どおりに使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨今、消耗品の多くが値上げされていることから、平成27年度の残金はすべて平成28年度の消耗品費として使用する予定である。
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