研究実績の概要 |
平成26年度および平成27年度の研究により、腹側被蓋野や黒質緻密部から視床下部外側野へドパミン神経が投射していること、視床下部外側野のドパミン量は摂食により増加すること、さらに視床下部外側野のドパミンD1およびD2受容体を刺激することにより摂食行動が抑制されることを明らかにした。一方で、視床下部には様々な神経ペプチドが存在し、摂食行動を調節することが知られている。そこで、平成28年度は、摂食行動を促進的に調節するアグーチ関連ペプチド(AgRP)、neuropeptide Y, orexin, メラニン凝集ホルモン(MCH)ならびに摂食行動を抑制的に調節するαメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)に注目し、ドパミンD1およびD2受容体の刺激による摂食抑制作用がこれらのペプチド神経を介するか否か検討した。 ドパミンD1受容体作動薬のSKF 38393を投与し、視床下部における各神経ペプチドのmRNA発現量をPCR法により測定した結果、NPYおよびAgRPのmRNA発現量は有意に減少したが、orexinの前駆体であるpreproorexin、MCHの前駆体であるproMCHおよびα-MSHの前駆体であるPOMCのmRNA発現量に変化は認められなかった。一方、ドパミンD2受容体作動薬のquinpiroleを投与した場合にはorexinの前駆体であるpreproorexinのmRNA量は減少したが、他の神経ペプチドのmRNA発現量は変化しなかった。 以上の研究より、視床下部のドパミンD1受容体はAgRP/NPY神経を抑制することで摂食抑制作用を示すこと、ドパミンD2受容体はorexin神経を抑制することで摂食抑制作用を示すことが示唆された。
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