一次聴覚皮質においてある音周波数に感受性が高い部位では、ニコチン投与がその周波数応答を増強させ、他の周波数応答を減少させる。本研究ではこのニコチン性フィルタリングの仕組みについて、分子、細胞、生体レベルで検証した。ニコチンによるプロテインキナーゼA (PKA)活性が細胞外シグナリングキナーゼ(ERK)を活性して、この制御をしていることがわかった。皮質内の興奮性シナプスでのニコチン性活性が、PKAを介して、主要な神経伝達物質グルタミン酸依存性イオンチャネルをリン酸化し、シナプス電流を増強していることが示唆された。また一方で、抑制性シナプスでも応答を減少させていることが明らかとなった。
|