研究課題/領域番号 |
26430028
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
渡辺 英治 基礎生物学研究所, 神経生理学研究室, 准教授 (30250252)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 行動 / 計算機科学 / 心理学 / 視覚 / メダカ / 脳科学 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、小型魚類(メダカ)の行動解析に計算機を用いたリアルタイム双方向情報処理システムを取り入れ、メダカの群れ形成における相互作用の重要性、群れ形成に関わる視覚情報、および視覚情報の数理モデルを解明するすることを目的とする。平成26年度においては、視覚刺激提示として使用するメダカの3Dアニメーションの作成を行い、完成した3Dアニメーションの提示によるメダカの群れ形成を引き起こす要因の探索を行った。メダカの3Dモデルは、3Dポリゴンに写真テクスチャーを貼り付ける形で作製した(ソフトは3dsMax)。テクスチャーはメダカ6個体分を用意し、動物の個性にも対応した。この3Dモデルに実際のメダカの運動トラッキングデータを組み込み、3Dアニメーションを完成させることに成功した(ソフトはBlender)。次に、完成した人工メダカの形状や色や運動様式を変化させることで、メダカの群れ形成を引き起こす要因の探索を行った。結果、いずれのパラメータもメダカの群れ形成を引き起こす要因になっていることが明らかになった。この結果は、メダカが同種認識をする際の高度な認知機構を示唆している。本業績は、The Sixth International Symposium on Aero Aqua Bio-Mechanisms(Honolulu, Hawaii)、第37回日本神経科学学会(横浜)、第74回日本動物心理学会(愛知)で発表した。学術雑誌での発表は現在準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の段階は、リアルタイム双方向情報処理システムに使用予定のメダカの3Dアニメーションの準備が完了したところである。さらに、このメダカの3Dアニメーションが、実際にメダカを十分に惹きつける能力を持っていること、色や形や動きがリアルさを失うとメダカを惹きつける能力が減弱することを検証することができた。この実験結果は、メダカの3Dアニメーションを用いて初めて明らかになったことを含んでおり、研究プロジェクトは順調に推移していると言える。また、OpenCVおよびProcessingを使ったメダカのリアルタイムトラッキングの開発も順調に進んでいる。OpenCVでは3次元上のリアルタイムトラッキングが、Processingでは2次元上のリアルタイムトラッキング実現しつつあり、Processingの描画能力を使って簡易なリアルタイム双方向情報処理システムが構築されている。ただし、3Dポリゴンで描かれたメダカにリアルタイムトラッキングを結合するシステムはまた開発途上である。
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今後の研究の推進方策 |
OpenCVおよびProcessingを使ったメダカのリアルタイムトラッキングの開発をさらに進め、システムの完成を目指す。システムが完成したところで、まずはメダカを点表現したバイオロジカルモーションに結合し、リアルタイム双方向情報処理システムの検証を行う。リアルタイムの相互作用がないバイオロジカルモーションを視覚刺激として利用した行動実験はすでに実績があるため、リアルタイム相互作用の効果が検証できると考える。その検証実験と並行して、ポリゴンで描かれたメダカにリアルタイムトラッキングを結合するシステムの開発を進めていく予定である。全システムが完成次第、メダカの群れ形成における相互作用の重要性、群れ形成に関わる視覚情報の検証実験を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度では、使用した研究費の大半はメダカの3Dアニメーションの作成に費やした。当初、同期カメラと三次元トラッキングソフトの購入を予定していたが、システムの開発に遅れが生じていること、ソフト開発を試行錯誤しているため、初年度の購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
ソフトの開発状況を見据えながら、平成26年度に購入予定であった機器の購入を進めていく予定である。
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