研究課題/領域番号 |
26430031
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
鈴木 航 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 室長 (80332336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオロジカルモーション / 上側頭溝 |
研究実績の概要 |
マーモセット・ミラーニューロンシステムの入力層である上側頭溝皮質領域(STS)の情報処理過程を電気生理学的手法と機能イメージング法を用いて明らかにすることによってミラーニューロンシステムの機能的役割を理解する。 まず、STSの一部の領野(FST野、FSTv野)の細胞が他個体の行動の目的を表現していることを示した。摂餌行動動画に対する細胞反応は行動により餌がなくなる(餌を取る)という文脈で最も強くなり、餌が現れるなどの不自然な文脈ではあまり反応しなかった。この結果はSTSが自然な行動目的を表現していることを示唆する。 次にSTSに機能イメージング法(内因性光計測法)を適用し、機能構造を調べた。さらに解剖学的構造を基にSTSの領野の境界を再構築し、機能構造上にマッピングした。これにより、レチノトピー構造やランダムドットモーションに反応する領域、他者の行動動画に対して強く反応する領域が解剖学的領野と直接比較できるようになった。マーモセットが生きた状態で複数の領野を同定することができるため、ミラーニューロンシステムの機能的役割を精密に調べることができるようになった。 最後に自然動画から動き情報だけを抽出するアルゴリズムを開発した。これによりマーモセットの動画からバイオロジカルモーション刺激を作成することに成功した。このアルゴリズムを用いてマーモセットの摂餌行動動画から運動情報のみを抽出したバイオロジカルモーション動画を作成し、STSの細胞反応を調べるとFST野、FSTv野では動画の局所的な運動ではなく、行動している個体全体の動き情報を表現していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミラーニューロンシステムの入力層であるSTSの視覚領野を機能イメージング法により同定した。また、STSの一部の領野が他個体の行動目的を表現する可能性があることを機能イメージング法、電気生理学的手法により示した。この領野は行動の局所的な動きではなく、個体全体の動きを表現している可能性も示すことができた。これらの結果によりミラーニューロンシステムの、特に入力層における情報処理過程の一端を明らかにすることができ、社会的役割を調べる行動実験のパラメタを決定するのに有用な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
機能イメージング法によりSTSの個々の領野を個体が生存した状態で同定し、その投射先の領域あるいは投射元の領域を薬理学的・分子生物学的に操作をすることでその機能特性がどう変化するかを検討する。さらに、STSで見られる情報処理過程を考慮しながら、個体の社会行動の変容も調べる。その際、行動の評価系を作成しなければならないが、3次元トラッキングシステムを開発することにより対処していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
麻酔下の電気生理実験と機能イメージング実験に専念したため、行動実験用の物品を購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
行動実験用の物品を購入する予定である。
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