研究課題
分泌性因子Fgf8は、発生の早いステージにおいて、脳原基の最も前側で発現がみられる。これは予定前頭前野領域の近傍である。前頭前野の発生にFgf8シグナルがどのように関与しているかを明らかにするため、分泌性因子Fgf8をマウス終脳前端部において強制発現させる実験を行った。胎生11.5日で遺伝子導入をしてから24時間後、Fgfシグナルのターゲット遺伝子であるSpry1およびSpry2の発現が誘導された。しかし、Fgf17およびFgf18の発現は誘導されなかった。これは48時間後でも同様であった。出生直後において、脳の形態・組織学的解析を行ったところ、嗅球が肥大化するとともに、前頭葉腹側と嗅球の組織は連続し、それらの境界は不明瞭となった。前頭葉で発現するマーカー遺伝子の発現変化を調べると、背内側領域(前帯状皮質および前辺縁皮質)が拡大し、背外側領域が縮小した。前頭葉腹側(下辺縁皮質、眼窩皮質)では、各種マーカー遺伝子の発現が乱れ、組織構築の異常が認められた。Fgf8は、前頭葉背側を内側化していると考えられるとともに、嗅球の発生においても重要な役割を担っている可能性が示唆された。また、Thy1プロモーターによって少数の神経細胞をラベルする方法とTet-Onシステムを組み合わせた方法を前頭前野領域に適用した場合、この方法は効率良く機能しなかった。理由は不明であるが、前頭前野領域への遺伝子導入は他の領域に比較して難易度が高く、導入効率が悪いためではないかと推測された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
FEBS Lett.
巻: 590 ページ: 3606-3615
10.1002/1873-3468.12429
Dev. Growth Differ.
巻: 58 ページ: 473-445
10.1111/dgd.12293