研究課題/領域番号 |
26430034
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小島 久幸 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00104539)
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研究分担者 |
堀川 順生 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50114781)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 時間間隔 / tempo / 条件づけ / 行動学 / イメージング / 膜電位感受性色素 / モルモット |
研究実績の概要 |
(1)競争の原理を用いて、異なる時間間隔を持つ繰り返し音を識別させる実験系を、モルモットを用いて確立した。 2週間、2匹のモルモットを同一ケージ内にて餌を強化因子として競争させ条件づけした。まず、約0.6秒の時間間隔で10回繰り返す反復音(各音は80ms)からなる条件音(CS)に条件づけさせた。条件づけ動物では特異な反応行動(BR)が96%の確率で生じた。その後、CSの時間間隔を100%とした場合にその33%, 50%, 150%, 200%となる試験音を作成し、訓練を完了した動物に聞かせてそのBRの有無を検定した。ある試験音でCSに対する場合と同一のBRが生じた場合に、動物はその試験音を100%の間隔を持つCSと同じものと知覚していると推定した。またBRが生じない場合は試験音を異なる音と識別したと推定した。 その結果、33%間隔音では6%、50%間隔音では33%の動物においてのみBRが生じた。一方、150%間隔音では100%、200%間隔音では89%の動物でBRが生じた。同時に行なったCSに対するBRと33%/50%間隔音でのBRの比率の検定において有意差が見られた。 結論として、モルモットは音の時間間隔ないしテンポを認識することができると考えられる。しかしその認識は繰り返し音の間隔の度合いに関して非対称性で、繰り返しの速いテンポ(間隔が短くなる)の場合は容易に対照間隔と識別できるが、遅いテンポ(間隔が長くなる)の場合は対照間隔と識別できないか、識別しないと考えられる。 (2)関連する内容の一部をNIH Science Events への招待を受け2015.2.25に発表する機会を得た。また学会発表を国内、国外において行なった。また研究会での発表を5月に予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画の第一段階は、動物に異なる時間間隔を持つ音を識別させる訓練の最適条件を見いだす事とした。しかも比較的短時間で条件づけが出来るような実験系を確立することを目指した。この目的は動物の社会行動の一つである競争を訓練に導入する事により、時間的にも手順的にも可能となった。しかし堤示間隔の短い繰り返し音を容易に識別するが、堤示間隔の長い繰り返し音は識別できないことの理由が現段階では解明されていない。この解明には時間がかかると推定される。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画の第一段階は、動物に異なる時間間隔を持つ音を識別させる行動学的条件を見いだす事とした。しかも比較的短時間で条件づけが出来るような実験系を確立することを目指した。この目的は動物の社会行動の一つである競争を訓練に導入する事により、時間的にも手順的にも可能となった。 今後は速いテンポと遅いテンポを識別する際、聴覚皮質はどのようにこれら繰り返し音に反応し、行動的な差異の基盤をなしているかを調べる。注目点は繰り返し音の最初の音とその後の音に対する反応強度、また各音への反応遅延時間に注目する。 手法としては皮質の広い領域から記録が可能な膜電位感受性色素を用いて活動を時空間的に記録する。東京医科歯科大学で行動学的に訓練した動物を、分担研究先である豊橋技術科学大学に送付して聴覚皮質より異なる間隔音を用いて活動記録を行なう。既に分担研究先において、適切な刺激の作成と記録の条件設定を開始した。一方伝統的な単一細胞ないし細胞集団からの活動電位記録も細胞レベルでの解析的な手法と考えられるが、長時間の記録を要すると想定されるため、補足的に使用する可能性も考慮する。
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