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2015 年度 実施状況報告書

分子発現パタンに注目した自閉症関連小脳神経回路の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26430035
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

藤田 啓史  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤講師 (60725901)

研究分担者 杉原 泉  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60187656)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード小脳 / 神経回路 / Pcdh10 / 自閉症スペクトラム障害 / 形成過程 / プルキンエ細胞
研究実績の概要

本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と関連の強い小脳第VI-VII小葉における神経回路の特異性を解析することを目的としている。ASD関連遺伝子のプロトカドヘリン10 (Pcdh10)は、小脳の発達期から第VI-VII小葉を中心とする特異な縦縞状の領域に発現する。Pcdh10発現がレポーター発現で標識されたマウス(OL-KOマウス)を用い、Pcdh10発現区画の構築とその発生過程、入出力軸索投射を解明することが研究の中心である。
まず、成獣小脳皮質におけるPcdh10発現区画を、標準的マーカー分子Aldocの発現パタンと比較して同定し、さらに、小脳核と下オリーブ核においても、小脳皮質と部位対応的関係にあると思われる区画に特異的なPcdh10発現が存在することを発見した(発表準備中)。さらに、胎仔期以降の小脳皮質Pcdh10発現区画の形成、変形過程の解析としては、特にダイナミックな変化の起きる胎生13.5日から17.5日の期間に関して全小脳標本と連続切片から三次元的に追跡した。初めPcdh10発現を持つ集団が4個認識され、分離・分裂しながら多くの集団(区画)に分化し位置と形を変えていくことが見いだされた(発表準備中)。これらの結果により、ASD関連小脳部位の特異性を、ASD発症に関係する発達期においてさらに検討することが可能となった。
また、小脳の半球部第VI-VII小葉の構築に関しては、ヒト小脳において特に発達しており非運動機能やASDと関連する第I脚・第II脚と呼ばれる部位が、両者を併せて齧歯類の第I脚と相同であることが、ヒト、マカク、マーモセット、ラット、マウスの小脳のMRI解析を含む三次元的形態解析とマーモセットとラットでの軸索投射パタン解析などから判明した(論文投稿中)。この結果は、疾患モデルマウス・ラットにおける小脳機能の解釈に新たな可能性を与えるものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の中心的部分は、研究代表者・研究分担者と、その指導を受けている2名(昨年度よりも1名増加)の大学院生により行われているOL-KOマウスでの解析である。OL-KOマウスの繁殖は、交雑系統であるB6C3F1マウスをバックグラウンドとすることで順調にいくようになった。また、胎仔の脳の切片は非常に脆弱であるが、手法の改善により切片の破損を抑えることができ、系統的に水平断、冠状断、矢状断連続切片を作ることができた。これら標本を元に、三次元グラフィクソフトウェアを用いて、三次元的解析が進んでいる。
また、小脳の第VI-VII小葉の特異性に関して分子発現に着目して解析する過程で、ヒト、サルの第I脚、および第II脚が、両者を併せてマウスの第I脚と相同である可能性に気がついたことが進展のきっかけになった。研究代表者と研究分担者が本課題以前の研究において、サル(マーモセット)小脳における分子発現パタンの解析を行った背景から、ヒト、マカク、マーモセット小脳の精密MRI(核磁気共鳴画像)撮影をおこなう着想を得て、小葉構造の解析を進展させることができた。
また、研究分担者が平行して行っている、小脳の神経投射や、プルキンエ細胞集団に関する、関連した解析が、共同研究者との共同研究や、研究室内の他の大学院生の研究によって進展したことも本研究に寄与している。昨年度・今年度の本研究の費用の一部により蛍光顕微鏡が整備されたことも進捗の理由である。

今後の研究の推進方策

次年度(最終年度)の平成28年度は、まず、これまでに投稿した、または発表準備中となった研究論文を発表させるべく、それぞれのプロジェクトを完成させることを目指す。すなわち、①ヒトと齧歯類の第I脚・第II脚小葉の相同性に関する成果、②OL-KOマウス成獣での小脳皮質、小脳核、下オリーブ核でのPcdh10発現区画の同定に関する成果、そして、③OL-KOマウスを用いた胎生期14.5日から17.5日における小脳のPcdh10発現区画の形成過程の三次元的解析に関する成果である。そしてそれたの成果から、第VI-VII小葉の特異性に関して、形成過程と比較解剖学の観点も含めて理解することを試みる。
さらに、最終年度は、第VI-VII小葉の特異性に関して、入出力神経投射の解析を継続することが、当初からの計画である。平成26年度に研究代表者らが論文発表したAldoc-Venusマウスを用い(小脳の縦縞区画構造が蛍光標識されているマウス)、蛍光顕微鏡下にPcdh10発現部位に対応した小脳皮質の部位、そして、そこと連絡する小脳核内の部位へ神経トレーサー(蛍光標識デキストラン、蛍光標識ラテックスビーズ等)を注入し、小脳入出力線維を標識する。この実験はすでに始めているおり、継続していく。この実験とその結果の解析により、第VI-VII小葉あるいは、第I脚の神経回路の特異性を明らかにし、この部位が非運動機能またはASD関連機能に関わる基盤を探ることをめざす。トレーサーとして、従来から用いているデキストランアミン以外に、いくつかの利点のある、アデノ随伴ウイルスベクターのトレーサーに関しても実験開始の手続きが完了したので導入していく。

次年度使用額が生じた理由

年度をまたいだ旅費の精算のため。

次年度使用額の使用計画

当該旅費の精算、および、消耗品の購入に用いる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Compartmentalization of the chick cerebellar cortex based on the link between the striped expression pattern of aldolase C and the topographic olivocerebellar projection.2015

    • 著者名/発表者名
      Vibulyaseck S, Luo Y, Fujita H, Oh-Nishi A, Ohki-Hamazaki H, Sugihara I.
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Neurology

      巻: 523 ページ: 1886-1912

    • DOI

      10.1002/cne.23769

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 小葉の立体構造、軸索投射、分子発現パタンの解析に基づくヒト、ニホンザル、マーモセット、ラット、マウスの小脳半球部小葉構造の相同性2016

    • 著者名/発表者名
      杉原泉
    • 学会等名
      第121回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      ビッグパレットふくしま、福島県郡山市
    • 年月日
      2016-03-28
    • 招待講演
  • [学会発表] Morphologically, molecularly, and functionally distinct classes of neurons in the medial cerebellar output nucleus.2016

    • 著者名/発表者名
      Hirofumi Fujita, Takashi Kodama, Sascha du Lac
    • 学会等名
      第121回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      ビッグパレットふくしま、福島県郡山市
    • 年月日
      2016-03-28
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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