研究課題
本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と関連の強い小脳の第VI-VII小葉、特にその半球部である第I脚(および第II脚)における神経回路の特異性を解析することを目的とした。まず、哺乳類小脳の小葉の相同性を確認した。MRI画像(ヒト、マカク)と連続切片(マーモセット、ラット、マウス)から三次元形態解析を行い、軸索投射パタンや分子発現パタンも考慮した。霊長類小脳で特に発達しており非運動機能の局在が示唆される第I脚・第II脚は、両者を合わせてげっ歯類の第I脚と相同であると考えられた(論文受理; in press)。この結果から、げっ歯類を用いたASD関連小脳部位の解析が可能となった。ASD関連遺伝子(にコードされる)プロトカドヘリン10 (Pcdh10) は、小脳第VI-VII小葉・第I脚を中心とする特異な縦縞区画のプルキンエ細胞に発現する。Pcdh10発現がレポーター発現で標識されたOL-KOマウスを用い、Pcdh10発現区画の構築とその発生過程、入出力軸索投射を解明することを本研究の中心とした。マウス成獣小脳皮質におけるPcdh10発現区画を、標準的マーカー分子Aldocの発現パタンと比較して同定し、さらに、小脳核と下オリーブ核においても、小脳皮質と部位対応的関係にあると思われる区画に特異的なPcdh10発現および神経回路が存在することを発見した(発表準備中)。さらに、大まかな小脳入出力回路が形成される胎生14.5日から17.5日の小脳Pcdh10発現区画の成長過程をOL-KOマウスにおいて三次元的に追跡した。その区画の中に、通常の縦方向への成長でなく、横方向への成長をする部分があり、それが第VI-VII小葉・第I脚へと成長することを見出した。この結果は、第VI-VII小葉・第I脚の入出力回路また機能の特異性を支持した(論文受理; in press)。
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Brain Structure and Function
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s00429-017-1436-9
Journal of Comparative Neurology
TBD
http://www.tmd.ac.jp/med/phy1/phy1.html