研究課題
本研究計画の目的は、実験動物(ラット)を用いて、妊娠・出産に伴う情動変化と扁桃体神経構築連関について、神経形態学・神経組織学的手法を基軸に、網羅的遺伝子発現解析による制御分子の同定といった、分子レベルおよび個体レベルの解析を有機的に統合し、妊娠・出産に伴う扁桃体神経構築の変化について、その生命事象の根本原理の解明を行うことである。これまでに、妊・産期の扁桃体神経細胞の継時的な形態変化を、ゴルジ鍍銀染色を用いて、樹状突起の分岐の数と棘の数を指標に解析を行った。妊娠後期から産後初期にかけて扁桃体基底外側核および中心核で棘の数が著しく減少する結果を得た。扁桃体との強い結合があり扁桃体延長領域に含まれる分界条床核についても神経細胞の形態解析を行ったところ、同様に棘の数が出産に伴い有意に減少することが明らかになった。さらに、分界条床核における棘の変化は、育児の有無に影響を受けることが明らかになった。出産後に育児をした場合、育児をしなかった場合より有意に棘が減少することがわかった。扁桃体・分界条床核はストレスや情動を調整する主要な領域であるため,出産後にこれらの領域の棘密度が低下していることは、分娩後に神経活動が低下していることを示しており、分娩後早期の情動不安定の原因となっている可能性が考えられる。以上の成果を国際誌に発表した。一方、妊娠出産に伴う神経新生の可能性について検討した。梨状皮質において妊娠期に上昇する傾向があることが明らかになった。梨状皮質は嗅覚伝導路の上位中枢で、扁桃体と強い連絡があることが知られている。妊婦において嗅覚の好みが変化することが一般に広く知られている。悪阻(いわゆるつわり)に伴い、妊娠前に特に嫌でなかった匂いに対し嫌悪を抱くことが多い。今後のさらなる追究が必要と考える。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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