研究課題/領域番号 |
26430040
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
深谷 昌弘 北里大学, 医学部, 講師 (10360900)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PSD / シナプス / BRAG1 / Af6 |
研究実績の概要 |
脳の興奮性シナプスのシナプス後肥厚部 (PSD) に局在するBRAG1は低分子量GTPaseであるArf6の活性調節因子として機能している。BRAG1はPSD-95との相互作用によりPSD選択的に局在し、興奮性シナプスでArf6シグナル経路を介した膜タンパク等のエンドサイトーシスに関与していると考えられている。また、BRAG1はヒトの精神遅滞の原因遺伝子の1つであることも報告され、高次脳機能に深く関与していることが示唆されている。しかしながら、BRAG1がどのような分子機構を介して記憶や学習といった高次脳機能に関与するのかは不明な点が多い。そこで、本研究課題ではBRAG1遺伝子欠損マウスを作成し、生化学的、形態学的、行動学的に解析することでBRAG1の興奮性シナプスにおける機能的役割を明らかにすることを目的として研究を行っている。平成27年度は前年度から継続して行っているBRAG1遺伝子欠損マウスの海馬において野生型に比べて発現量が変化している分子のスクリーニングを免疫組織学的に行ったところ、興奮性シナプスのPSDに豊富に存在するグルタミン酸受容体の局在量もしくは局在部位に変化が生じている可能性が考えられる結果が得られた。このグルタミン酸受容体はPSD-95と複合体を形成することから、BRAG1もこの複合体を形成しグルタミン酸受容体の局在や細胞表面発現量の調節に関与している可能性が考えられた。また、このグルタミン酸受容体の欠損マウスでは海馬依存的な学習が障害されることから、BRAG1欠損マウスでも海馬依存的な学習行動の解析を試みている。今後は、BRAG1がどのようにグルタミン酸受容体を調節しているのかを検証するために海馬初代培養を用いてシナプス可塑性を誘導する化学的刺激を与え、グルタミン酸受容体の細胞表面発現量の変化等を定量解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BRAG1欠損マウスの海馬においてグルタミン酸受容体の発現量もしくは局在の変化と考えられる結果が得られ、シナプス伝達が変化していると考えられるが、学習行動の解析結果がまだ得られていない。また、海馬錐体細胞の棘突起密度等の形態学的解析も29年度に終える予定であるため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究結果を基に、野生型とBRAG1遺伝子欠損マウスの海馬で発現量もしくは局在の違いが認められたグルタミン酸受容体をさらに詳細に検証するために包埋後免疫電子顕微鏡法を用いてPSD内部の局在を定量的に解析する。この定量結果が得られればBRAG1のPSDでの機能的役割が推察できる。これらをさらに検証するために海馬初代培養を用いてシナプス可塑性を誘導する化学的刺激を与え、グルタミン酸受容体の細胞表面発現量の変化等を定量解析する予定である。さらに、行動学的解析結果からBRAG1の欠損と高次脳機能との関連性を推察し、シナプス可塑性発現時のより詳細なBRAG1のタイムラプスイメージングやArf6の活性化型の定量解析を行い、BRAG1の興奮性シナプスのPSDでの機能的役割の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
継続して行っている形態学的解析のための抗体試薬購入の平成27年度分を平成28年度に使用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度分の助成金に加えて次年度使用額で継続して行っている形態学的解析に使用する抗体試薬を購入する。
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