研究実績の概要 |
Cdk5の基質であるCRMP2を中心にCRMPの機能解析を行なった。昨年度、CRMP4欠損マウスにおいて、脊髄損傷後の回復が野生型に比べて良いことを報告した(Nagaiら,2015)。2015年度は、CRMP2のリン酸化の抑制が脊髄損傷からの回復に有利に働くとの仮説を立ててCdk5によるCRMP2のリン酸化が起きないCRMP2KIマウスを用いて検証した。脊髄損傷後にCdk5, GSK3によるCRMP2のリン酸化が起きることが確認できた。次に、CRMP2KIと野生型のマウスに脊髄損傷を起こして、運動機能回復をBMSスコアで、感覚機能の回復をhot plateでの温度上昇に対する反応として、それぞれ術後4週間検討した。その結果、野生型に比べ、CRMP2KIでは、運動機能及び感覚機能の回復が顕著に良好であった。また、DRGニューロンのCSPGに対する反応が減弱していること、BDNFへの反応が上昇していることなどが分かった。このDRGニューロンの反応性の変化が感覚機能回復に寄与していると考えられた。また、機能回復は組織学的検討でも裏付けけられた(Nagaiら, 2016)。 また、遺伝子改変マウスを用いて、CRMPが神経細胞の樹状突起の発達に関連していることを示してきたが、今回はスパイン密度について検討した。特に、Cdk5,その活性化サブユニット p35欠損マウスにおいては、スパイン数の減少の報告がある。今回CRMP2KIマウス海馬においてスパイン密度を検討し、CRMP2KIマウスにおけるスパイン密度の減少を観察した(Jinら, 2016)。
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