研究実績の概要 |
研究代表者らは、成体大脳皮質1層に神経前駆細胞 (Layer 1 Inhibitory Neuronal Progenitor Cells: L1-INP細胞) が存在し、虚血(Ohira et al., Nature Neurosci, 2010)や抗うつ薬投与(Ohira et al., Neuropsychopharmacology, 2013)により、抑制性神経細胞の成体神経新生が起こることを明らかにしている。本研究は、機能解剖学的解析を行うことで、L1-INP細胞による成体神経新生の特性を明らかにすることを目的としている。 虚血と抗うつ薬投与によってL1-INP細胞の神経新生は促進されることは、すでにわかっているが、どのような分子メカニズムにより仲介されているのか全く不明である。そこで、本年度は、その分子メカニズムとしてBDNFシグナリングに注目し、BDNF特異的受容体であるTrkBサブタイプとp75の3種類のL1-INP細胞における発現について明らかにすることを目的とした。 まずTrkBサブタイプであるTrkB-T1の抗体を作製した。C末の11アミノ酸残基からなるペクチドを合成し、モルモット4匹に免疫した。4匹中1匹からTrkB-T1特異的抗体が得られた。この抗体を用いて、L1-INP細胞における発現を調べたところ、ほぼ全てのL1-INP細胞に発現していることを見出した。その他の受容体の特異的抗体を用いて、現在解析中である。
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