神経突起伸展は、神経突起周囲を取り巻く環境に大きく依存する。この環境には、細胞外基質の組成が大きく関わることが考えられる。また、平成27年度までの研究において、細胞外基質の重要性が示唆される結果を得ていた。平成27年度に見出した基質の影響による細胞骨格に与えるFILIPの影響の違いについて詳細に検討するため、基質を変更した場合におけるアクチン結合蛋白質の細胞内での濃度を免疫染色により検討した。その結果、FILIPによる結合により低下するアクチン結合蛋白質の濃度は、FILIPのそれぞれの機能に関わるドメインを欠損したFILIP変異分子を発現した場合は全長のFILIPを発現した場合に比べると高く、コントロールに近いことが判明した。これは、FILIPが様々な分子と相互作用し機能していることを示している。さらに、基質からのシグナルにより活性化され細胞骨格に影響を及ぼす低分子量G蛋白により、FILIPによるアクチン結合蛋白質の量の低下に影響がもたらされている可能性を考えた。そこで、低分子量G蛋白の活性化を阻害することによりFILIPの作用に対し影響を与えうるか検討した。その結果、アクチン結合蛋白質の量は、FILIP存在下でも低分子量G蛋白の阻害剤によりFILIPを発現していない細胞とほぼ同じ水準に戻ることが判明した。また、神経突起の伸展には、アクトミオシンの調節が重要であることが知られている。今回、FILIPが関与するアクトミオシンの調節系に、Hsc70の活性が重要な役割を果たしており、FILIP、ミオシン、Hsc70が結合することが必須であることを明らかとした。
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