研究課題
本研究の目的は、PINK1-Parkin経路の新規基質として見出したタンパク質IPASの解析を行うことによりパーキンソン病発症メカニズムの解明に繋げることと、これらの神経変性疾患に関わるオートファジーの新規分子シグナル機構の解明を行うことである。前年度までの研究において、ミトコンドリアのIPASは、スレオニンの12番目を含むいくつかの部位がCCCP依存的にPINK1によってリン酸化されることを見出した。さらにIPAS T12A変異体を作製したところ、IPASとParkinとの結合が起きなくなることを見出した。このことからIPASはPINK1-Parkinによって制御されていることがわかった。さらにパーキンソン患者組織の解析により、IPASの発現量がこの患者特異的に中脳黒質で増加されていることが示された。またパーキンソン症状を引き起こすMPTP によってIPASは発現誘導されるが、IPASノックアウトマウスにおいてMPTPによる中脳黒質神経細胞死が緩和された。これらの結果からIPASがPINK1-Parkin経路によってリン酸化とユビキチン化を受け分解されること、さらにParkinの変異などによってその制御の破綻が起きた際にIPASが蓄積して神経細胞死を誘発しパーキンソン病発症に関与していることが示された。本年度はさらにIPASがMAPK/p38経路の下流においてもリン酸化され制御されることを見出し、このリン酸化がIPASのよるアポトーシス誘導機能を促進することを明らかにした。また、神経保護作用を持つタンパク質NXFとの関連を解析した結果、両者が相互作用してIPASによる神経細胞死を抑制することを見出した。これらの結果をまとめて現在論文投稿中である。またオートファジーの新規分子シグナル機構を解析した結果、Ulk1の脱リン酸化酵素を見出すことに成功し論文として報告した。
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