研究実績の概要 |
果糖の輸送体はGLUT5のみならずGLU8も脈絡叢の上皮細胞と上衣細胞に存在することが判明し(Histochem Cell Biol, 2016, 146, 231-236)、さらに、GLUT8は脳室周囲領域のアストロサイトやミクログリアの細胞質に局在することも判明した(Neurosci Lett 2017, 636, 90-94)。これらのことからは、脳室周囲領域では果糖はグリア細胞に取り込まれて、神経細胞に何らかの影響を与えている可能性が推測された。さらに、高血糖状態のマウスでは糖を含む血管内物質の脳室周囲領域への移行が亢進している事を示唆する所見が得られ、高血糖状態では脳室周囲領域が糖化などの影響を受けやすいものと推測された(Microsc Res Tech 2016, 79, 833-837)。 また、高フルクトース環境の神経細胞の初期分化時の生存や突起伸長へ影響を評価するため、初代培養ラット胎仔の神経細胞にフルクトースを 0.1 mMまたは1 mM加えて48時間培養し、生存率、活性酸素種産生量、突起伸長に対する影響を比較したが、負荷によりこれらのパラメータには明らかな差は見られなかった。一方、播種後7日を経過した初代培養ラット神経細胞に対し、フルクトースを加えて3週間以上培養を継続し、細胞の生存率、活性酸素種産生量の測定を行った。細胞生存率については、コントロールに比べ、1 mMフルクトースを長期負荷した状態では10%程度生存率が低下していたが (p < 0.05)、活性酸素種産生量については、フルクトース長期負荷群とコントロール群との間に明らかな差はなかった。さらに、GLUT5を発現しているミクログリアにD-フルクトースを負荷後、生存率及び活性酸素種産生量を測定したが、これらのパラメータにおけるフルクトース負荷による影響は明らかではなかった。
|