ヒトの悪性腫瘍の中で最も治療が困難なもののひとつに悪性グリオーマと呼ばれる脳腫瘍がある。本研究では悪性グリオーマの特性を知り、新たな治療法の開発の手がかりとするために、腫瘍細胞の代謝動態を調べた。その結果、本腫瘍では脂質の合成も利用も共に活発に行われ、悪性の性質に寄与していると考えられた。また、代謝を調節する薬剤であるメトホルミンの投与により、腫瘍細胞の代謝動態と共に、遺伝子の化学修飾による発現調節(エピジェネティクス)が大きく変動した。これらの結果より、悪性グリオーマ細胞内における代謝とエピジェネティクスとの相方向性の影響が本腫瘍の生物学的特性の基礎にあることが示された。
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