研究課題/領域番号 |
26430060
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
高尾 昌樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50245487)
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研究分担者 |
美原 盤 公益財団法人脳血管研究所, その他部局等, 教授 (30190721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プリオン / 軸索輸送 / アミロイド / 変性疾患 / 認知症疾患 |
研究実績の概要 |
研究計画書に従い、27年度も継続してプリオン病の新規剖検症例を含め、標本作成を継続した。26年度に比し、剖検症例数の減少があったが、希少疾患のため、常時一定数の症例蓄積を行うことが困難なためである。よって、症例選定に関して、現在までに、孤発性、遺伝性、医原性プリオン病として計40例(遺伝性;P102L、V180I、E200K、M232R、計8例)を、選定することができた。 病理組織の標本準備に関し、27年度にあらたに剖検した症例の一部を含め、26年度に引き続き、前頭葉、帯状回、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、扁桃、海馬、海馬傍回、大脳基底核、視床、小脳、脳幹部、網膜、視神経を含むブロックを準備した。27年度終わりに剖検された症例を除き、組織切片の準備、プリオン病診断のための基本的組織染色は終了した。昨年度検討により、プリオン免疫染色は3F4とし、全ブロックでの染色を継続した。 研究計画にある、PrP沈着(免疫染色による)と神経線維との関連に関し、海馬錐体細胞において、樹状突起や軸索に沿ったPrP陽性の連続する顆粒状陽性所見は、多くの症例でよくみられる所見であった。これらは一部の遺伝性プリオン病にみられる軸索に沿った陽性所見とは異なる印象があり、さらなる検討を要する。同様な所見は、他の解剖学的部位にも検出されたが、一定した所見ではなく、検討を継続する。Parchiらによる分類と上記病理所見との関連は次年度に予定する。 タウ(AT8)、α-シヌクレイン、アミロイドβ、などに対する病理学的検討はほぼ全例で終了し、病理学的ステージングも終了した。次年度はこのステージングと、Parchi分類もふまえ検討を行う。Kovacsにより提唱された、AT8陽性のsmall neuritic profileはほぼすべての症例で認めたことから、全ブロックで検討を施行することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の計画として、症例選定に関しては、米国症例において引き続き遅れがあるが、自施設例は新規症例も追加され、おおむね順調である。 組織検討に関して、基本的組織染色も施行し、プリオン抗体による評価では、基本となる抗体の選定、染色状況も安定した。神経変性疾患関連の蛋白に対する免疫染色も終了し、基本的な病理学的ステージングも決定できた。また、神経線維に沿ったPrP沈着も、病理学的に確認できているが、遺伝性プリオン病とは形態が異なる可能性、また解剖学的部位の検討を継続する必要がある。当初研究計画になかった所見も見いだされている一方、遅れている部分もあるが、最終年度にむけ、おおむね順調に施行されていると考慮された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、症例を追加しながら組織標本の作製も行うが、同時に最終年度をむかえ、PrP陽性の神経線維の解剖学的分布や組織学的特性を確立する。また、Parchiの分類や、ほかの神経変性疾患に関連した病理学的ステージングとの関連もふまえ、当初の予定どおりデータ解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度までに施行される免疫染色などにおける関連試薬の使用が、剖検症例数の減少もあったため使用量が少なくなったこと、海外症例の検討において、出張時期が今年度も調整困難で施行できなかったこと、あらたな所見などのため、研究内容が28年度に継続されるものもあることからである。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度において、さらに必要な組織学的染色、症例の選定、最終的な解析、報告,また新たな検討のために使用する試薬などを含め、適切に使用する。
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