研究課題/領域番号 |
26430067
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高崎 一朗 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (00397176)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / PACAP / 神経障害性疼痛 / アロディニア / マイクロアレイ / Maxadilan / アンタゴニスト |
研究実績の概要 |
本研究では痛みの慢性化機構の解明を目指し,Maxadilan投与マウスの脊髄における遺伝子発現変動を検討してきた。平成26年度は発現がそれぞれ9.3倍と4.8倍に上昇した分子AおよびBについて着目し研究を遂行したが,平成27年度は,それらに加えてそれぞれ2.5倍と4.3倍に発現が上昇した分子Cおよび分子Dにも着目し研究を進めた。なお,分子Cは転写因子として機能し,分子Dは核内受容体として機能する分子である。 分子Aに関しては平成26年度の研究で,髄腔内に投与すると機械的アロディニアを発症し,ケモカインの発現を誘導することを明らかにした。平成27年度は,さらにその分子メカニズムを解明する目的で,培養細胞を用いた検討を行った。分子Aは,マウス初代培養神経細胞,初代培養アストロサイト,C6グリオーマ細胞において,ケモカインの発現を濃度依存的に誘導した。この誘導はPI3K阻害剤で阻害されたことから,ケモカインの発現にはPI3K-Akt系が関与していることが示唆された。分子AがPI3K-Akt系を活性化する受容体としてインテグリン受容体αVβ3に着目した。グリオーマ細胞をαVβ3阻害薬で前処置したが,ケモカインの誘導は抑制されなかった。分子Aに構造内には種々のインテグリン結合ドメインが存在しており,現在,どのインテグリンが分子Aによるケモカインの発現および疼痛慢性化に関与するか検討中である。 分子Cを神経細胞に過剰発現あるいはノックダウンさせると,神経突起の伸張あるいは抑制が起こることを見出した。分子Cは神経細胞の過剰なネットワーク形成によって痛みの慢性化に関与する可能性があり,現在研究を進めている。 分子Dは核内受容体であり,アンタゴニストは新しい鎮痛薬となる可能性がある。インシリコスクリーニングにより10種類のアンタゴニスト候補化合物を同定し,阻害作用を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに研究は順調に進んでおり,「おおむね順調に進んでいる」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
分子Aによるケモカインの誘導に関与するインテグリン受容体サブタイプの同定と,それに対する阻害剤のデザイン・創薬・薬理学的評価を進める。また,分子A内には4つの重要なドメインが存在しているが,そのうちどのドメインが疼痛の誘導に重要であるかを調べるため,ドメイン欠損体のタンパクを作製して,培養細胞および慢性疼痛モデル動物における評価を行う。異常の研究を通して,分子Aの疼痛発症メカニズム解明の全容を明らかにする。 分子Cは培養神経細胞において,神経突起の伸長に重要な役割を果たしていることを明らかにしたので,in vivoにおいても同様の現象が得られるかどうか検討し,痛みの慢性化への関与を検討する。すなわち,分子Cをレンチウイルス等で脊髄神経細胞に強制発現させ,疼痛が誘導されるかどうかを検討する。また分子Cがどのような機序で神経突起伸長に関与しているか,その分子メカニズムを詳細に検討する。 分子Dに関して,アンタゴニストを入手・合成して薬理学的評価を行う。ヒット化合物については誘導体化合物の合成と評価を行い,慢性疼痛モデル動物を用いた評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展したが,1,013円の残額が生じた。当該残額は,当研究の遂行に必要な遺伝子関連試薬や抗体等を購入するには不十分でありため,次年度への繰越を決定した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に繰り越し,必要な試薬等の購入に充てる予定である。
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