研究課題
本研究の目的は、LED光源刺激から惹起されるさまざまな生物学的影響を分子生物学的手法により明らかにすることである。言うまでもなくLEDは、その利点から多岐にわたる分野に応用されている。しかしながらその反面、未だ医学的な安全性が確立されたわけではない。紫外線のようにDNAの損傷や免疫抑制といった多くの報告はないが、特に青色LED下では害虫の忌避行動や加齢黄斑変性症など失明に至る原因になっているとの報告もある。今後エネルギー供給量の減少に伴い従来の光源からよりエネルギー変換効率の良いLED光源へとシフトすることは明らかである。その安全性措置として、LED光源による生物学的影響の解明が急務である。我々は、LED光源曝露の対象としてモデル生物である線虫C. elegansを用いた。C. elegansを用いる利点としては発生段階、代謝や神経系など多岐にわたる解析が可能であることがあげられる。また、ライフサイクルが短いことから遺伝学や遺伝子操作が容易に行えるため他の生物に比べ扱いやすいことも理由の一つである。昨年度の条件検討の結果に基づき用いたLEDは、中心波長465nmでコントロールとして白色光と照明なしの3種における寿命を比較検討した。その結果、青色LED(465nm)においては寿命の減少が優位に認められ、次いで白色光、光源なしの順であった。目をもたない線虫は通常土壌中に存在し、感覚器を頼りに行動していることから光は何らかのストレスとなっていると考えられた。しかし、LED照射後の線虫からRNAを抽出して行ったマイクロアレイ実験では、若干の増減のある遺伝子は見つかったものの寿命との関連性のあるものは今のところ得られていない。
3: やや遅れている
初年度急遽制作依頼したLED照明装置の納品に時間がかかり、実験開始が遅れたことが響き条件検討等の問題から実質的な実験を遂行するまでそうとうの時間を要してしまった。また、LED光源の照射する範囲に制限があることから多検体を同時処理進行することが難しいことも遅れの原因となっている。しかしながら、複数波長域のLED光源を用いるよりLED光源の影響がありそうな青色LEDに絞れたことは、今後の進捗には有利となると考えている。
昨年度行ったマイクロアレイで得られたデータを発現解析ソフトのGeneSpringを用いて寿命、老化、神経系、メタボローム等関連の遺伝子を抽出・分類し、関連遺伝子の意味づけを行う。その結果に基づいて、トランスジェニック線虫の作製による過剰発現と、逆にRNAi法を用いた遺伝子のノックダウンを行いLED光源下での表現型を観察する。さらに本来線虫C. elegansが持たないチャンネルロドプシン(Cannnelrhodopsin-2)遺伝子を発現ベクターに組み込んだトランスジェニック線虫を作製し、青色LED光源下での表現型を探る。分子生物学的な解析として、定量RT-PCRによる厳密な遺伝子発現量をしらべ、次いで各種抗体を用いたウエスタンブロッテイングによる発現量との相関性を検討していく。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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