研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態形成に細胞内小器官の一つ小胞体の障害、すなわち小胞体ストレスの関与が示唆されている。平成27年度までに我々は、①ALSモデルマウスであるG93A SOD Tgマウス(以下、ALSマウス)では、小胞体ストレス関連遺伝子であるGRP78の発現がALS発症に先んじて特に脊髄の運動神経で上昇することを認めた。更に、UPRの主幹転写因子であるATF6を欠損したマウス(ATF6 KOマウス)とALSマウスの交配を行い、得られたATF6 KO / ALSマウスの表現型を解析した結果、同マウスにおいては、②ALSマウスに比し早期からALSを発症すること、③SOD蛋白質の凝集を早期から運動神経軸索に認め、それに引き続いて、④ユビキチン(Ub)化蛋白質の集積、及び⑤オートファジーの亢進を認める結果を得た。一方、⑤ALS発症後の進行についてはALSマウスとATF6 KO / ALSマウスで有意な差を認めなかった。GRP78の発現はALS発症に先んじて運動神経で上昇し、その後、活性化したグリア細胞でも認められたことから、我々は、上記⑤の理由として、ALS病態の早期と後期でATF6が異なる役割を持ち、早期では神経保護作用、後期では脳内炎症促進作用を示すのではないかという考えに至った。これの仮説に基づき、我々は平成28年度に以下の実験を行った。まず、野生型及びATF6 KOマウス由来の培養グリアを用いてその活性化、炎症応答について検討した。その結果、いずれについてもATF6 KOマウス由来の細胞で減弱していることが明らかになった。次に、マウス運動神経障害モデルを用いて生体でのグリア細胞の活性化について比較した結果、やはり、同マウス由来のグリア細胞で低下していることが確認された。以上の事から、時期特異的なATF6の制御がALSの病態制御に重要である可能性が示唆された。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Glia.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/glia.23139.
Neurochem Int.
10.1016/j.neuint.2017.04.002.
J Neurochem.
巻: 139(6) ページ: 1124-1137
10.1111/jnc.13714.
J Neural Transm (Vienna).
10.1007/s00702-016-1666-7.
http://med03.w3.kanazawa-u.ac.jp/
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/44946