研究課題
(1)脳内Aβ産生分泌部位の検討-シナプス前部仮説の検証:マウス脳の懸濁液からシナプス構造を分画化し(シナプトソーム)、さらに界面活性剤への溶解度差を用いた分画化やマーカータンパク質抗体への親和性によるシナプス小胞単離などを併用し、各分画に含まれるタンパク質を検出して仮説を評価した。その結果、基質APPおよびγセクレターゼ複合体はシナプス前膜、なかでも活性化ゾーンとそれに関連したシナプス小胞に濃縮して局在することが明らかとなり、シナプス前部仮説が支持された。(2)シナプス部γセクレターゼ複合体の分子修飾の解析:Aβ42産生比を増加させるPresenilin-1の翻訳後修飾の可能性について検討するため、HEK293細胞およびカニクイザル脳の懸濁液を用い、抗Presenilin-1抗体でγセクレターゼ複合体を免疫沈降した後、抗リン酸化Ser/Thr抗体、抗リン酸化Tyr抗体、抗アセチル化Lys抗体、ニトロ化Tyr抗体を用いたイムノブロット法で検出を試みたが、いずれも有意ではなかった。(3)Aβ産生抑制タンパク質ILEI (ACDP)を標的とするADの予防的治療法の探索:脳ILEIはγセクレターゼ複合体同様にシナプス前分画での発現が確認された。ILEIはγセクレターゼ複合体に結合し、基質APP-C99の安定性を低下させAβ産生を抑制する。この結合を統計力学3D-RISM理論に拠って解析し、分子設計によるAβ産生阻害薬の開発を目指した。まず、この結合はPresenilin-1のC末端領域DQL配列に依存することを見出した。ILEIの予測構造上にDQL配列の側鎖の分布をマッピングした結果、ILEI上のLys84側鎖近傍に結合部位の候補が特定された。数種のLys84置換変異体を発現するプラスミドを作製し、ILEIノックアウトHEK293細胞に発現させて機能評価を継続している。
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分子精神医学
巻: 印刷中 ページ: 未
実験医学『認知症研究の新時代』
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