研究課題
脳脊髄液と脳組織間液の流れ(以下「脳内循環」)は脳梗塞や頭部外傷といった脳傷害によって大きく影響を受けると考えられるが、その実態については不明な点が多く残されている。一方、近年の研究から、脳内循環の不全はβアミロイドの蓄積などの原因となることが示されており、脳傷害に伴うアルツハイマー病発症リスクの増加は、脳内循環の不全に起因するものと予測される。我々が開発した光傷害マウスでは、頭蓋を保持したまま局所性脳傷害を作成することができるため、局所的な傷害が周辺の脳内循環に与える影響を検討することが可能である。本研究では、この利点を生かし、光傷害マウスにおける脳内循環の不全を蛍光色素の大槽注入による組織学的解析と、造影剤を用いたMRIによるin vivoイメージングによって明らかにすることを目的としている。本年度は、傷害急性期を中心に解析を進め、局所的な脳傷害に伴い、周辺の広い範囲で脳内循環の不全が起こることが組織学的解析とMRIによって明らかとなった。
3: やや遅れている
大槽から色素またはMRI造影剤を注入することによって脳内循環を解析することが可能となったが、造影剤としては主にガドリニウムを利用して進められた。ガドリニウムは脳内循環の画像化に利用された例が報告されている一方で、脳脊髄液への注入は安全性の問題から臨床ではルカ脳である。このため本研究では17O-H2Oを利用した造影を行うことを計画しているが、まだ十分な成果を得るには至っていない。
組織学的解析とガドリニウムを用いたMRIによる検討を、脳傷害急性期のみならず回復期においても行い、脳傷害の病態が進行するに伴って、脳内循環がどのように変化するかを明らかにする。されにこれらのデータを17O-H2Oを用いたMRIによって画像化する条件を決定することにより、MRIによる脳内循環の診断を可能にする基盤技術を確立する。
17O-H2Oを用いたMRIの撮像には造影剤の調整などに費用がかかることがわかっており、本研究費はおもにこの実験に利用される予定である。このため、組織学的解析やガドリニウムを用いた予備的実験は、既存の設備と試薬を用いて行うこととなり、次年度使用学が生じた。
蛍光色素とガドリニウムを用いたMRIにより、光傷害マウスにおける脳内循環の不全の実態が明らかになり次第、順次17O-H2Oを用いたMRIを開始し、本研究費をこれに用いる。
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Cell & Tissue Research
巻: 未定 ページ: 未定
J Neurosci Res
脳循環代謝
巻: 25 ページ: 63-66