研究課題/領域番号 |
26430071
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森田 光洋 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (50297602)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳脊髄液 / βアミロイド |
研究実績の概要 |
高濃度の17O-H2Oを大槽から投与することにより脳内循環をMRIで画像化することを試みた結果、ガドリニウムなどを造影剤として用いた場合と異なり、血管周辺スペースの標識が見られなかった。これは水が血流と急速に置換され、脳から排除されている可能性をを示唆している。血液と脳脊髄液の間で水の交換が起こっていることは、水を放射標識して血中から投与するPETの研究によって示唆されているが、脳のどの部位で、どういったメカニズムによって、どの程度置換が起こっているかについては不明な点が多く残されている。また、脳内循環は水の流れであるにも関わらず、水と溶質が異なった動態を示すということは、この分野の研究、特に既存のデータの解釈において大きな意義を持つ。一方、脳内循環はアルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドの除去機構であることが報告されているため、脳内循環が不全となる脳傷害モデルにおいてβアミロイドの集積を検討したところ、予想に反して傷害数ヶ月の損傷周辺においてβアミロイドの減少が見られた。これは破壊された組織の除去と修復の過程で、βアミロイドが効率的に除去されていることを示唆している。脳内循環は正常な脳においてβアミロイドを除去するかもしれないが、脳損傷部位では脳内循環が不全となる一方、βアミロイドを分解・貪食する活性が亢進することにより、正常な脳部位よりも効率的にβアミロイドが除去されるのかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内に直接投与した17O-H2Oによる脳内循環の画像化は困難であることが明らかとなったが、この研究により脳脊髄液と血流の新しい相互作用が明らかになりつつある。また、脳血流から17O-H2Oを投与した場合の画像化の可能性に着いても検討を進めつつある。一方、脳内循環がβアミロイドを除去する経路に関しては、脳傷害が除去を促進するという、新しい可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は17O-H2Oを造影剤としたMRIにより、脳脊髄液と脳血流の相互作用の実態を解明する。特に、脳脊髄液と血液の間における水の置換が、脳のどの部位で、どの程度起こっているのかを明らかにする。これにより、従来の標識されたデキストランなどをトレーサーとした研究では見えていなかった、水の流れとしての脳内循環の実態が明らかになると期待される。また、脳傷害に伴うβアミロイド除去の亢進が脳内循環とどのような関係にあるかを決定する。特に、脳傷害に伴うβアミロイドの分解・貪食の亢進と、脳内循環の不全が全体としてアルツハイマー病の発症にどのように関与するかを決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験結果が予想に反した新たなものであり、プロジェクトの内容を一部変更して成果を出すため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験などに必要な消耗品購入に3,166,773円におよび研究発表関連に500,000円。
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