研究課題/領域番号 |
26430072
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研究機関 | 東海学院大学 |
研究代表者 |
安田 邦彦 東海学院大学, 健康福祉学部, 講師 (50278446)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HDAC6 / Mdm20 / mTOR / インスリンシグナル / オートファジー / 老化 / 分子シャペロン |
研究実績の概要 |
本研究では細胞質におけるアセチル化修飾関連酵素によるmTORシグナルの統括的な制御を担っていることを明らかにする目的で研究を行ってきた。昨年度までにいまだ明らかにされていない生体内におけるmTORC2の活性をN-アセチル化酵素の補助サブユニットであるMdm20がmTORC2の構成タンパク質の一つであるRictorの発現を制御することでmTORC2の活性を制御することを報告した。本年度はさらに詳細な分子機構について調べるためにmRNAの転写レベルやタンパク質合成や伸長反応など、発現制御に関わるいくつかのステップを様々な予備実験や検討実験を主体に進めてきたが、現在のところ新しい知見は得られていないが、引き続き今後も検討する予定。 一方で、細胞質の脱アセチル化酵素であるHDAC6もmTORC2と相互作用することも見出しており、本年度はHDAC6はmTORC1とも相互作用し、mTORを中心とした複合体形成にアセチル化修飾が関与し、さらにmTOR活性を制御することを明らかにした。しかし、その詳細な分子機構については現在も引き続き検討中であり、論文報告までには至らなかった。引き続きアセチル化修飾を受ける標的分子及び標的アミノ酸を同定し、アミノ酸置換変異体や特異抗体などを作成し、分子機構について明らかにしていく予定。さらにmTORシグナルの統括的制御機構におけるHDAC6とMdm20との関係性についても検討していく予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新しい分子機構の解明に取り組むことが多く、予備実験や検討実験を様々な条件下で試すことが多かったこと、また新しい手法の導入及び確立などに時間を割かれたことなどが原因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施した予備実験や検討実験の結果より、アセチル化修飾酵素がmTORを中心とした2種類のリン酸化複合体、mTORC1及びmTORC2の活性を複合体構成分子の親和性を介して制御することが明らかとなってきた。今後はアセチル化修飾を受ける分子及びアミノ酸部位を同定し、アセチル化修飾によるリン酸化活性の制御機構の分子機構を解明することで細胞質におけるアセチル化修飾の生物学的意義の提唱を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度所属する大学を異動したことに引き続き、本年度は新規分子機構の解明を主軸に研究に取り組んだこともあり、予備実験や検討実験が多く、予定どおり研究が進まなかったのが大きな理由。しかしながら、ある程度方向性が見えてきたので、今後はその結果をもとに引き続き研究に取り組む予定。
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次年度使用額の使用計画 |
脱アセチル化酵素のHDAC6がmTORを中心とした複合体と相互作用し、さらに複合体形成に影響をもたらすことが明らかになったので、今後は直接作用する標的分子及びアセチル化修飾を受けるアミノ酸を質量分析により同定し、HDAC6によるmTORシグナルの制御機構を明らかにする。一方で、N-アセチル化酵素の補助サブユニットであるMdm20はmTORC2の構成分子であるRictorの発現を制御するが、Mdm20は補助サブユニットでありアセチル化活性は有していない。今後はMdm20と相互作用するアセチル化活性をもつ因子の存在についても確認していく予定にしている。
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