神経細胞は老化に伴い体内の様々なホメオスタシスのバランスが崩れ、エネルギー代謝の低下に加え酸化ストレスを含む様々なストレスにより変性・脱落が起こりやすくなる。本研究はインスリンシグナル系の中心的な役割を担うAkt/PKAの活性制御をリン酸化修飾ではなくアセチル化修飾により制御されていることに着目してきた。ホメオスタシス制御にはタンパク質の品質管理も重要な制御機構の一つに挙げられ、脱アセチル化酵素であるHDAC6はタンパク質の品質管理にも重要な制御因子でもある。今回はHDAC6が分子シャペロンであるHSP70と相互作用をすることを新規に見出したので、その制御機構について調べた。HSP70は変性タンパク質の修復を行う際に、様々なシャペロン分子と相互に作用する。その一つにHSP105があり、HSP105は5HSP70と結合しHSP70のシャペロン活性を抑制するとが報告されている。本研究によりHDAC6はHSP70とHSP105の親和性を低下させることを明らかにした。さらにHSP105との親和性が低下することによりHSP70は基質である変性タンパク質との親和性が増加することを確認し、HDAC6がタンパク質の品質管理において正の制御因子であることを明らかにした。さらにHDAC6の標的分子はHSP70ではなくHSP105であり、現在その標的アミノ酸の同定に取り組んでいる。
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